給水車、午後9時にも住民次々 瓦吹き飛び「どこへも行けない」 千葉停電 南房総の避難所

台風15号の影響で9日未明から停電と断水が続く千葉県。4日目の夜を迎えた12日夜、約2500戸が停電している房総半島最南端に位置する南房総市白浜町を歩いた。【秋丸生帆】
白浜町は人口約4600人。台風通過後、多くの民家から明かりが消えた。停電を免れた白浜コミュニティセンターは9日から避難所として開設され、12日夜には約30人が寝泊まりしていた。
午後7時前。市職員が袋詰めされた非常食やトイレットペーパーなどを配っていた。ホールの床にマットを敷いて毛布にくるまっていた女性(89)は「電気も水もご飯もあって快適だけど、早く家に帰って片付けをしないと」と話した。
和室では、脳梗塞(こうそく)を患い膝から下が動きづらいという男性(63)が弁当をほおばっていた。9日未明、1人暮らしの男性は雨漏りの音で目覚めた。バケツを手に寝室に戻ろうとすると、平屋の屋根瓦が吹き飛んだ。ベッドの上に瓦が降り注ぎ「一歩間違っていたら死んでいたかもしれない」。ろうそくをともして一番安全と思えたトイレで便座に座ったまま朝を迎えた。避難所生活も4日目。「住める場所が見つかるまでは、どこにも行けない」と不安そうに言った。
駐車場には給水車が止められ、午後9時になっても住民が空のペットボトルなどを手に次々と訪れていた。翌朝まで避難者の対応を担当するという市教委の在原徹さん(47)は笑顔で言った。「お年寄りが多い地域。田舎だからこそ、近所で助け合っていかなきゃね」
避難所を出て車を走らせる。少し離れると街灯も消え、真っ暗になった。その中に、電気が復旧した家が数十から数百メートルごとに点在している。
避難所から約3キロ先に、ほのかに明かりをともして営業を続けるコンビニエンスストアがあった。セブン―イレブン白浜滝口店。自家発電装置を使って24時間営業を続けている。この夜も電球を四つだけともした薄暗い店内で営業していた。弁当やおにぎりなどすぐに食べられる食品は9日にほとんどなくなったが、12日午後にまとまった数のパンを入荷できた。車のない高齢の夫婦らが「ありがとう」と言って買い求めたという。
午後11時。午前中から働いているという男性店員が帰り支度をしながら言った。「オーナーの意向で地域のために営業している。停電はいつまで続くかわからないけど、明日も頑張りますよ」