広島市南区に現存する最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」について県が保有する3棟のうち2棟の解体方針を示した問題で、全棟保存を訴える県被団協(佐久間邦彦理事長)などは11日、「旧陸軍被服支廠を見て学ぶ会」を現地で開いた。戦時中、被服支廠に学徒動員され軍服の洗濯や補修を担当した切明千枝子さん(90)=安佐南区=が当時を振り返り、多くの人がメモを取りつつ聴き入った。
切明さんによると、米軍の攻撃を避けるため、赤レンガの建物は当時グレーに塗られていた。敷地内では旧満州(現・中国東北部)など寒い地域で使用する軍服の毛皮用にウサギが飼われており、餌やりが楽しみだったという。
学徒動員では「戦死した兵隊から引っぺがしたような銃弾の穴のある血まみれの軍服を手洗いした」と語り、「新しい軍服を作るお金はなかったのだろう」と推測。被服支廠については「広島が軍都であり、被爆前は加害の街だったことの証明でもある。私たちの命が果てても建物は戦争の証人となる。たった1棟残したのでは意味がない」と全棟保存を訴えた。
参加した安芸区の森岡穂津枝さん(70)は「ウサギを飼っていたなんて知らなかった。数少ない遺産なのだから残すべき」と話した。
老朽化している旧被服支廠は震度6以上の地震で倒壊する恐れがあり、県は1棟の外観のみを保存する方針を示した。一方、広島市の松井一実市長が全棟保存を求めるなど再考を訴える動きが相次いでいる。【手呂内朱梨】