里山の生物減少 身近な自然に忍び寄る危機

人と自然が共生してきた環境に、異変が生じているのだろうか。
環境省が実施する全国の自然環境調査で、林や田畑が広がる里地・里山では、チョウやホタル、ノウサギなどの生き物が減っていることがわかった。10年間、200か所のデータを分析した。
顕著だったのは、チョウ類の急減だ。北海道から九州まで分布する「ミヤマカラスアゲハ」は1年あたり平均で31%、

国蝶
( こくちょう ) の「オオムラサキ」も16%減った。
調査対象となった87種のチョウのうち4割は、将来的に絶滅が危惧されるレベルの減り方だった。気がかりな結果である。
昨年には、世界の科学者の団体が、「100万種類の生物が絶滅の危機に直面している」との警告を発した。今回の調査結果は、世界規模で進む環境の劣化が、身近なところでも起きていることの表れではないか。
例えばチョウは、他の動物の餌となっているほか、花の雄しべの花粉を雌しべに運んで受粉を助けている。こうした食物連鎖や繁殖のサイクルが崩れれば、生態系全体に影響が及びかねない。
近年、市街地にクマやイノシシが出没するケースが増えている。人間と動物の中間地帯である里山の環境変化により、食べるものが減ったことが、人間の居住空間に下りてくる一因だろう。
里山の変化は、人口減で林や田畑の手入れが行き届かなくなったことが影響しているとの指摘がある。地域の衰退が、自然環境に打撃を与えていると言える。
里山の適切な管理を続けていく努力が求められる。
三重県志摩市の森では、ボランティアらが水辺の草刈りや水路整備、外来植物の駆除などを行った。その結果、カエルの産卵数の回復に成功したという。
岩手県一関市では、非営利組織が地域の住民や学校と連携する。夏になると、子どもたちが川沿いでホタルの生態を観察し、住民が手助けしている。このような取り組みを広げたい。
農地を維持する事業を国や自治体が支援する制度では、水田や畑の生き物を保全する活動も対象に含まれる。制度を周知し、利用を増やすことが大切だ。
今回の環境省の調査には、各地の市民2500人以上が調査員として協力している。全国の里山の環境変化を裏付けるデータが蓄積されている意義は大きい。
環境保全には、多くの人が関心を持つことが欠かせない。