避難指示一部解除から初めての餅つき 福島・大熊で

東京電力福島第1原発事故による避難指示が昨年4月に一部解除された福島県大熊町の大川原地区で13日、解除後初となる餅つき大会が開かれた。避難先から集まった町民ら約350人は再会を喜ぶとともに、同地区で実証栽培されたもち米を使ったつきたての餅に舌鼓を打った。
事故前は毎年秋に町内で餅つき大会が開かれていたが、同地区では昨年1月、町民や企業、行政などで作る「おおくまコミュニティづくり実行委員会」が主催する形で、8年ぶりに餅つき大会が復活した。今回は昨年5月に業務を開始した役場新庁舎前で規模を拡大して実施した。
前回はもち米がイノシシに食い荒らされ、町産米での餅つきは断念したが、事故前と同じ収量に回復した今回は町産米を使った。町農業委員会の根本友子会長(72)は「除染で失われた地力も回復し、モチモチとした良い出来栄えの米ができた。多くの皆さんに食べてもらいうれしい」と話した。
同町からいわき市に避難する石井弘さん(72)は「事故前にたくさんの町民が集まって餅をついたことを思い出し、懐かしい」と目を細めた。同様に同市に避難する清水富江さん(67)は「子どもたちの姿もあり、安心した」と喜び、町で生まれた孫の三浦里依紗さん(9)は「きねは重かったけれど、楽しかった」と額に汗を浮かべてはにかんだ。【寺町六花】