岩手県立二戸病院(二戸市)で2015年、60歳代の男性患者がコンピューター断層撮影装置(CT)の検査で腎細胞がんの疑いを指摘されていたにもかかわらず、主治医が報告書の内容を読まず、患者が死亡していたことがわかった。県医療局が15日に公表した。
同局や患者遺族の代理人弁護士によると、男性は15年3月にCT検査を受け、「腎細胞がんが疑われる」との所見が画像診断報告書に記されたが、呼吸器内科の主治医が読まなかった。男性は16年8月、別の疾患の治療のため同病院で検査を受けた際に腎細胞がんが見つかり、17年1月に死亡した。県医療局と遺族の間では示談が成立したという。
同局によると、この主治医は応援医師で、スタッフと連絡を取り合うことが少なかったという。周囲の医師らは、主治医が報告書を読んで男性の状況を把握していたと思い込んでいた。
県医療局の鎌田隆一・業務支援課総括課長は「関係者におわび申し上げる」と陳謝し、再発防止策として、院内の電子カルテに「既読」ボタンを設定し、重要な所見がある場合は表示を強調するシステムに改修した。
県医療局は04年度から、県立病院の医療事故について患者や家族から同意を得たうえで半期ごとに公表しているが、患者が死亡したケースは確認できた13年度以降でほかにないという。