消防団から「選考会」に出てと手紙、欠席なら「決定事項に従って」 勧誘が「強引」と物議

非常勤の団員からなる消防機関「消防団」から、ある男性のもとに入団を勧誘する手紙が届いた。消防団員の「選考会」への出席を求め、返信を要請する内容で、「もし出席して頂けない場合には、選考会の決定事項に従って頂きますのでご了承ください」と続く。
この手紙は、受け取った男性がツイッターに投稿したことで拡散。男性は返信しなければいけないのだろうか。総務省消防庁と、消防団を管轄する市に聞いた。
「貴方は、令和2年度消防団員対象者に該当しております」
届いた手紙の写真は2020年1月15日、「にとりん」(@NitriN_sachikoP)さんが投稿。手紙には次のように書かれている。
選考会に「出席します」「欠席します」のどちらかを丸で囲んで返信を求め、「欠席の場合には選考会の決定事項に従います」と繰り返し強調している。住所・氏名の記入欄と、「1月19日までにご返信をお願い致します」と期限も書かれている。
投稿者は東海地方に住む20代男性。「消防団ってこんな風に入るのか」と疑問に思ったという。待遇次第で消防団に入ること自体は前向きながら、病気を患っているため入団は難しいとも投稿していた。
男性はJ-CASTニュースの17日の取材に応じ、「1週間ほど前に僕宛の封筒が届いていたのがきっかけでした」と明かす。投稿した紙以外に、「選考会」の開催場所・時間が書かれた別の紙も同封されていたという。
活動が多様化するも、人員不足が課題
消防団は、消防組織法にもとづいて各市町村の管理のもと設置される消防機関だ。総務省消防庁のウェブサイトによると、全国に約2200団が組織され、消防団の下に分団を組織しているところもある。団員数は全国約84万人。火災などの災害対応に加え、防災の啓発などを行っており、地域密着性や即時動員力に長けている。
消防署との最大の違いは、消防署では常勤の地方公務員(消防吏員・消防官)が業務に専念しているのに対し、消防団は日頃別の仕事をしながら、災害時に地域の経験を生かして活動する非常勤特別職の地方公務員が団員である点。入団資格は自治体ごとに定めているが、一般的に18歳以上で、その市町村に居住か勤務していれば入団できる。市町村から数万円程度の年額報酬や、災害活動・訓練に出動した際に1回あたり数千円程度の手当てなどが支給される。
厳しい現状もある。同庁が18年1月にまとめた「消防団員の確保方策等に関する検討会報告書」によると、消防団は東日本大震災はじめ、大規模災害の発生時に大きな役割を果たしており、活動内容が多様化。重要性が高まっている一方で、消防団員数は全国的に人員不足に悩まされ、平均年齢も上がっており、団員確保は慢性的な課題としてのしかかっている。
冒頭の手紙は、そうした状況の中での必死の勧誘ともとれる。投稿に対しては「余程、消防団員になる人が少ないんですね」といった声もある。一方で強引さも感じさせる文面には「こんな選び方することもあるんですね」「自分消防団員ですがこんな勧誘の仕方はだめだと思います」と違和感も抱かれている。
返信しないと入団させられる?地元本部は否定
この手紙、書かれているように返信しなければならないのだろうか。総務省消防庁の担当者に聞いてみると、「消防庁から出したものではなく、回答する立場にありません。加入促進については、消防庁から事あるごとにお願いはしていますが、具体的な勧誘活動の指示をすることはありません」との答えだった。
手紙を受け取った男性の居住地域を管轄する市消防本部にも、手紙の文面を伝えながら問い合わせた。担当者は、次のように認識を示した。
一方、手紙に返信しなければならないかどうかについては「そこまでの強制力はありません」と話す。
「選考会」と書いてあるのは、「最低限の活動ができる健康状態かを確認する程度のもの」だとしている。
地域によっては「ご無礼料」存在か
投稿者の男性は、消防団によっては「ご無礼料」と称した出不足金を払うところもあると耳にしているという。団の活動に参加できなかった団員に求められる罰金のようなもので、男性の知人は1万円支払わされたことがあるとしている。
この「ご無礼料」というシステムは本当に存在するのか。前出の市消防本部担当者は取材に、「ああ」と相槌を打ちながら話す。
前出の消防庁担当者は、消防団での出不足金について「把握していない」とし、そもそも団が金銭を徴収することについて、「消防団長は消防団の事務を総括し、所属の消防団員を指揮・監督するもので、その活動にかかる権限はありますが、消防団長や消防団の権限でお金を徴収することはできません」と話している。