千葉県内のある男性の身に降りかかった出来事が、ネットユーザーの怒りを買っている。携帯の機種変更のためドコモショップを訪れると、店員に契約上の書類を渡された。すると書類の中に、顧客男性のことを〈クソ野郎〉〈親が支払いしてるからお金に無トンチャク〉などと侮辱する内容を記したメモ書きがあった──。
【写真】客を「クソ野郎」と記すメモ
1月8日、男性の知人がこの騒動の顛末をツイッターに投稿すると、店員に批判が殺到。NTTドコモは10日、「お客様にご不快な思いをさせてしまったことは、誠に申し訳なく、深くお詫び申し上げます」とコメントを発表した。
この一件では、「クソ野郎」という呼び方が“悪”というより、客をいわば“カモ”のように扱っていたことにも批判が集まったが、こうした“悪習”は珍しくないようだ。ある携帯販売店の店員が明かす。
「携帯電話に詳しくない客を『弱い人』『情弱(情報弱者)』などと呼んで、オプションのプランを契約させる販売店もあるようです。家族との通話くらいしか携帯を使用しない“弱い高齢者”に、“お孫さんとの写真をたくさん保存できたほうが良いですよね”と言って大容量のSDカードをセットで買わせるといったケースもある」
同様の事例は他の業界でもあるという。40代の投資信託の営業経験者が明かす。
「これまで投資経験がなく、初めて年金や退職金を投資に回す人の中には、企業で長年勤め上げ、私のような世代を部下に携えてきた人が多い。そういう人には“お客様なら当然、この商品がお得なのはご理解いただけると思います”と説明すれば、よく分からなくても言い出せずに快諾してくれる場合がある。そうして窓口では笑顔で説明しておきながら、裏では『知ったかぶり』『お偉いさん』などと呼んで、嘲笑している営業マンもいる」
◆「甘い客」「ゆるキャラ」
生命保険業界では、昨年6月以降、かんぽ生命での不適切な生命保険販売が発覚。一部の郵便局員が、高齢で契約を結びやすい顧客を「半ぼけ」「甘い客」「ゆるキャラ」などと呼んでいたケースもあったと報じられた。生命保険の営業を経験した元銀行員はこう言う。
「個人宅に飛び込み営業する場合、ほとんどは玄関先で断わられる。しかし、営業マンに同情して話を聞いてくれる人がいたら、契約をとれる貴重な顧客である可能性が高い。そういう人のことは『お友達』と呼んで、その日に契約をとろうとはせず、何度か家に通って契約をとります。とくに独り暮らしの高齢者は、定期的に通ううちに“あなたがそこまで言うのなら”と判を押してくれやすい傾向にある」
子供や孫を巻き込むケースもある。ある学習塾の関係者が明かす。
「大して成績がよくないお子さんでも、両親や祖父母が教育熱心な家庭は、より多くの授業や試験を受けてくれるので『VIP家族』と呼んでいる。成績を伸ばすよりも“不満を持たれて塾を辞めないように注意”とミーティングで話し合っている」
客を「隠語」で呼ぶ職員の低いモラルは許されるものではないが、自分がどう呼ばれているかは気になって仕方ない?
※週刊ポスト2020年1月31日号