営農「再開」「しない」が同率 原発事故避難12市町村調査

東京電力福島第1原発事故で避難指示が出た福島県内12市町村で、営農を「再開した」「再開する」農家と、「しない」農家の割合がほとんど同じという結果が、被災事業者を支援する「福島相双復興官民合同チーム」の営農再開グループによる訪問調査で出た。同グループでは、少しでも再開につなげられるよう支援を続けたいとしている。【柿沼秀行】
合同チームの中で農林水産省東北農政局や県などでつくる同グループが、2017年4月~昨年12月にかけ、被災地の農家1774人を訪問し、意向をまとめた。それによると、再開したのは518人(29%)、今後再開する意向を示したのは247人(14%)で、計43%を占めた。一方、再開する意向のない農家は766人で43%を占めた。「未定」は243人で14%だった。
調査は、農家からの悩み相談に応じて訪問する中でヒアリングした結果で、訪問対象となっていない農家も含めると実際は「農業をあきらめた」という人がもっと多くなるとみられる。
再開した農家に課題を聞いたところ「農業機械や施設、家畜、新規作物などの導入」が36%▽「販路や販売単価の確保」20%▽「労働力の確保」が18%――となった。今後再開する意向の農家は、「野生鳥獣の被害防止対策」37%▽「用排水路の復旧」32%▽「農地・草地の除染など」18%――と続いた。
一方、再開意向がない、または未定という農家に理由を聞くと、「帰還しない」(39%)▽「高齢化や地域の労働力不足」(38%)▽「機械・施設などの未整備」(19%)▽「農地の確保が困難」(10%)――などが挙がった。また、自営での農業は再開しなくても、農業法人など被雇用の形で携わると言う農家が98人(10%)いた。既に農地を貸している農家は85人(8%)、今後農地を貸す意向だという人が739人(73%)に上った。
福島相双復興官民合同チームは、原発事故で避難指示が出た県内12市町村の商工業者に対し、戸別訪問して相談型の支援を行うため、15年8月に設立された。東電社員や経営コンサルタントら民間出身者と、国や県などで構成。昨年12月現在で約5300の事業者を訪問し、古里で事業を再開したい事業者の支援を続けている。
営農再開グループでは、支援策として、作付けされる農地の拡大に向け、農地を貸したい所有者と、農地を借りたい担い手をマッチングさせる集落単位の座談会を実施した。
また、販路の確保に課題を感じている農家のため、収穫した野菜を東京都内を中心とした飲食店に直送する仕組みを構築したり、地元スーパーの地産地消コーナーなどを紹介したりして支援した。
同グループの里見善弘・調整課長は「農家の悩みはさまざまだ。多くの農家の希望に応え、一人でも多く営農再開に結びつけられるよう支援策を講じたい」と話している。