国立感染症研究所(東京都新宿区)の脇田隆字所長と鈴木基・感染症疫学センター長が28日、報道陣の取材に応じ、新型肺炎について「1人の患者から感染するのは2人前後。感染力が強まっている根拠はない」との認識を示した。現在、国内で発症した患者からのコロナウイルス分離を試みており、中国当局が情報公開している流行初期のウイルスからの変異などを調べる予定という。
新型コロナウイルスの感染力を巡っては、中国国家衛生健康委員会が26日の記者会見で「強くなっている」と発言し、潜伏期間中に他人に感染させる可能性も指摘した。1人の感染者が平均で何人にうつすかを示す数値(基本再生産数)は、世界保健機関(WHO)が1・4~2・5とみているが、3以上と試算した英国や香港の研究チームもある。
これに対し、鈴木センター長は「検査が進んで見かけ上は増えているが、現段階では1~2人が共通認識。感染力が強くなっている疫学的な根拠はない」と指摘。中国では未発症者でウイルス検査陽性だった例が報告されているとしつつ「一般的なウイルス感染症は、陽性でも症状がなければ感染力はない」と説明した。脇田所長は「ウイルスの遺伝情報の変異が起きているかは承知していない」と語った。
また、人から人への感染経路は、せきやくしゃみによる飛沫(ひまつ)感染が最も考えられ、感染の可能性があるのは家族や医療関係者などの濃厚接触者に限られるとした。中国で患者が急増しているのは「大家族で暮らしているという生活環境があるかもしれない」(鈴木氏)とみる。【小川祐希】