安倍長期政権は国会の議決がいらない、いわば“安倍勅令”ともいえる「閣議決定」を乱発して行政府の役人たちを従わせ、政権の不祥事にフタをして思うままに政治を進めようとしている。
【写真】笑顔で演説する小泉進次郎環境相だが……
例えば、安倍首相主催の「桜を見る会」に反社(反社会的勢力)とみられる人物が出席していた問題では、「反社の定義が困難」ということにすれば“反社が桜を見る会に出席していたかどうかは判断できない”という理屈で言い逃れできる。反社対策に力を入れる政府方針に逆行する前代未聞の閣議決定をした。
また、桜を見る会で「安倍首相夫人の招待枠」があったとされる問題では、森友学園問題の時に続いて昭恵夫人が「公人」か、「私人」かが議論になったが、首相夫人は公務員ではないから、いくら国費を使っても公人としての責任や義務はないという閣議決定を行った。
そして小泉進次郎・環境相の国際会議での意味不明な「セクシー」発言についても政府のこんな正式な解釈が決定された。
〈小泉環境大臣の発言における「sexy」という語については、(中略)正確な訳出は困難であるが、例えば、ロングマン英和辞典(初版)によれば、「(考え方が)魅力的な」といった意味がある〉(2019年10月15日)
いずれも、野党の質問主意書に対する答弁書として閣議決定され、安倍首相名で国会(衆院議長)に提出されたものだ。
世界各国を見渡しても、「sexy」の訳まで政府が閣議決定するのは日本くらいだろう。国民からすれば、質問する側も、こんな答弁書を出す政府も、何やってんだかと思いたくなる。いったい、誰が書いているのか。元文部科学官僚の寺脇研・京都造形芸術大学教授が語る。
「答弁書の文言を作成するのは官邸や内閣府の事務方ですが、内容に応じて所管省庁が下書きをするのでしょう。その文案を考える場合、当然、安倍総理のお考えはどうかということを考え、推察し、忖度してつくる。
総理の考えに沿った内容でなければ、閣議決定できないからです。最近の質問主意書への回答には妙なものがあると思われるかもしれないが、それは、とどのつまりは安倍総理のお考えなのだということです。
ただし、小泉環境相のセクシー発言のような大臣自身の考えについては役人にもわからない。本来は大臣が会見や国会で答えるべきだが、小泉さんがはぐらかしたために質問主意書が出された。役人も困って苦し紛れに辞書を引いたのでしょう」
※週刊ポスト2020年2月7日号