無届け伐採、東京ドーム83個分 全国の民有林実態明らかに 森林再生せず

全国の民有林で2017年度末現在、少なくとも858件・386ヘクタールが自治体に届け出ずに違法伐採された後、森林が再生しない状態になっている。無届け伐採の全国規模が判明したのは初めてとみられ、伐採後に土砂災害が起きた箇所もある。安倍政権が林業の成長産業化を図る一方、自治体の監視は追いつかず、こうした無届け伐採が今後拡大する懸念も出ている。
突出して多い宮城 岩手、宮崎はゼロ
毎日新聞は、47都道府県から林野庁に報告された民有林(天然林と人工林)の伐採跡地に関する内部資料を、同庁への情報公開請求で入手。都道府県が17年度末時点で「無届け伐採後に再造林(植え直し)などがされず、森林が再生していない」と報告した件数・面積を独自に集計した。
全国の合計面積は東京ドーム83個分。内訳は宮城県(679件・213ヘクタール)が突出して多く、三重県(43件・52ヘクタール)、北海道(11件・26ヘクタール)、静岡県(9件・25ヘクタール)などが続いた。林業が盛んな岩手、宮崎両県など21都府県はゼロ。ただ、各自治体で林務担当職員の人手不足が目立つ中、林野庁が全容を把握できていない可能性もあり、実際の無届け伐採の規模はさらに膨らむ恐れがある。
民有林は、民間が所有する私有林と自治体などが持つ公有林の総称。森林・林業統計によると、17年度の全国の民有林の伐採面積は推計7万3508ヘクタール。林野庁によると、全国の市町村に提出される伐採届はこの数年、年6万件前後で推移している。一方、同庁として正式に確認できた全国の無届け伐採件数は11~17年度で計19件にとどまった。
林業の成長産業化を図る政府は民有林の効率的な伐採を後押しし、18年に森林経営管理法を成立させた。市町村が所有者から委託を受けて民有林を集約し、利益が見込める民有林については、経営管理を「意欲と能力のある経営者」に再委託する仕組みだ。木材生産の増加を目指す政府方針の下で市町村の権限が拡大する一方、現場の管理は後手に回っている実態が浮かんだ。【寺田剛】
ことば「伐採届」
民有林を所有者が伐採する際、原則として市町村に伐採届を提出し、伐採面積や期間、再造林(植え直し)する場合は方法などを知らせるよう、森林法で義務づけられている。市町村は地元の森林整備計画を逸脱しないかを審査した上で受理。「自然再生が困難」と判断した場合、所有者に再造林を要請することもある。保安林に指定された民有林は、所有者が都道府県に伐採を届け出る。森林法は悪質な無届け伐採には100万円以下の罰金を科すと定めている。
専門家「伐採実数、もっと大きいはず」
野口俊邦・信州大名誉教授(森林経済学)の話
行政に無届けで伐採が行われ、森林が再生していない実態を示す数字があることに驚いた。現場に一番身近な市町村の林務担当者に伐採届をチェックする力量はなく、都道府県に再チェックをする余裕もない。国への報告が正確に行われているとは考えにくく、伐採されている実数はもっと大きいはずだ。(管理の行き届いていない民有林を市町村に集約する)森林経営管理法が2019年4月に施行されたが、市町村が主体的に管理する体制がない中で、業者による伐採先行の林業が行われる懸念が拭えない。