野党、検事長定年延長を批判 法相は「重大事件の捜査・公判に対応」と反論

野党は3日の衆院予算委員会で、安倍内閣が7日に定年を迎える黒川弘務・東京高検検事長(62)の勤務を国家公務員法に基づき半年間延長したことについて、政治的な意図を拭いきれないと批判した。黒川氏が首相官邸に近いとの指摘があるためだ。これに対し、森雅子法相は「重大かつ複雑、困難な事件の捜査・公判に対応するためだ」と反論した。
国民民主党の渡辺周氏は「検察庁法で検事総長は65歳、その他の検察官は63歳に達したときに退官と定めている。誕生日1週間前の駆け込み人事はなぜか」と追及した。森氏は「勤務延長は検察庁法に書かれておらず、国家公務員法が適用される。検察官はないが、公務員の勤務延長は前例がある」と説明した。
渡辺氏が「(黒川氏を)次期検事総長にして、にらみを利かす人事とされる」とたたみかけると、森氏は「黒川氏の豊富な経験・知識に基づく部下の指揮監督が不可欠だ」と強調した。
勤務延長で、黒川氏は検察トップの検事総長に就任する可能性が出てくる。野党は「黒川氏は安倍政権の意に沿い、法務行政を牛耳ってきた」(立憲民主党の枝野幸男代表)とみており、検察が統合型リゾート(IR)を巡る事件などを抱える中、「官邸主導人事」を強く疑う。
野党4党は3日の国対委員長会談で、この人事を追及する方針を確認。立憲の安住淳国対委員長は記者団に「権力を行使する側と監視する側の微妙な話だ。こうした(人事の)問題に安倍政権の何か本質みたいなものが垣間見える」と批判した。
これに対し、安倍晋三首相に近い自民党の世耕弘成参院幹事長は1月31日の記者会見で「(黒川氏が)特定の政治家に近いということはない」と否定しつつ、「(法務省の)官房長、次官として存じ上げているが、非常に仕事ができる」と評価した。【東久保逸夫】