クルーズ船内“密室”感染拡大か 新型肺炎 乗客への伝達後手

横浜港沖に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で、乗客乗員10人が新型コロナウイルスに感染していたことが5日、発覚した。厚生労働省は当初、感染者以外の帰宅を容認すると説明していたが、最大14日間の船内待機を要請するなど方針を転換。同港沖に停泊した3日以降も乗客らの行動を制限しなかったことで感染が広がった可能性もある。乗客への情報伝達も後手に回り、“密室”の船内で多くの人が長時間過ごすクルーズ船の感染症対策に課題を残した。
「乗客乗員の検査が進行中であり、最大限の安全策を取ったのではないか」
世界保健機関(WHO)の見解に基づき、新型ウイルスの潜伏期間を従来の「14日間程度」から「10日間程度」に見直したばかりの厚労省が今回、疫学上の観点から14日間程度を維持したことについて、長崎大熱帯医学研究所の森田公一所長(ウイルス学)はそう指摘した。
■無症状者の検査も
一方、感染者以外の人にとっては、5日にも帰宅できるとの期待を裏切られた形になった。厚労省は当初、発熱などの症状がある人や最初に感染が確認された香港の男性(80)との濃厚接触者を検査対象としつつ、症状がある人の濃厚接触者の検体も並行して採取した。
「感染者が判明してから改めて採取するよりも、負担を軽減できる」。厚労省の担当者は柔軟な姿勢を強調したが、結果的に検体数が膨らみ、検査時間が長引く要因になった可能性もある。
新型ウイルスが高齢者や持病がある人で重症化しやすいため、厚労省は健康状態を見極めながら症状のない人の検査を追加することも検討しているという。
■検疫中も行動自由
船内放送で3日午後まで香港の男性の感染が伝えられなかったことや、同日夜から厚労省の検疫が始まった後も船内の飲食店などが通常営業され、乗客が自由に行動できたことを問題視する声もある。
相模女子大の湧口清隆教授(交通経済学)は「香港の感染情報に接した後、情報発信の判断に時間がかかった。船長らの認識が甘かった」と指摘。森田氏は「無症状の感染者がいることが確認されている中で、悔やまれる対応だ。乗客には部屋にいてもらい、互いに接点がないようにするべきだった」と話す。
■共有スペース多く
交通機関での感染予防をめぐっては、航空機なら半径2メートル以内の座席にいた人が濃厚接触者として、感染の可能性がある。電車で同じ車両に乗った程度なら感染のリスクは低いが、満員電車の場合は短時間でも接触・飛沫(ひまつ)感染の危険にさらされているといえる。
クルーズ船では乗客に客室があてがわれるものの、飲食店や浴室など共有スペースが多い船内で長時間一緒に過ごすため、感染リスクは低くない。
森田氏は「(船内の)感染経路を追跡しやすいメリットがある一方、検疫上の対象者が膨大になるデメリットがある」と対策の複雑さを強調。「感染者の客室の掃除などを担当した乗員は感染リスクが高く、知らぬ間に感染が広がっている恐れもある」。湧口氏はこう警鐘を鳴らした。