【目黒女児虐待死、母親判決詳報】(上)懲役8年判決 大好きだった実母からも苛烈な食事制限…裁判長「苦しみ、悲しみ、絶望感は察するに余りある」

《東京都目黒区で昨年3月、船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5)=が両親から虐待を受けて死亡したとされる事件で、保護責任者遺棄致死罪に問われた母親の優里(ゆり)被告(27)の裁判員裁判の判決公判が17日午後3時、東京地裁で始まった》
《守下実裁判長の合図で優里被告が入廷した。上下黒のスーツに黒いブラウスを着用。裁判長に着席を促されると小さくうなずき、着席後は無表情に下の方を見つめた》
裁判長「被告人は証言台の前に来てください」
《裁判長の言葉に従い、証言台の前に立つ優里被告》
裁判長「主文、被告人を懲役8年に処する。未決勾留日数中300日をその刑に参入する」
《その後、裁判長により量刑理由の読み上げが始まった。まずは、虐待の苛烈(かれつ)さが指摘された。結愛ちゃんへの食事制限は、平成30年1月23日に一家が香川県から上京して以降、極端に厳しくなったという。結愛ちゃんの体重は1月4日時点で16・6キロだったのに対し、死亡時には約12・2キロだった》
裁判長「わずか1カ月あまりの間に体重の約25%が失われたことになる上、解剖時の所見や現場に駆けつけた消防隊員の証言からも、被害児童がほおがこけ、骨が著しく浮き出ると言った異常なやせ方をしていたことが認められるのであるから、被告人らによる食事制限は明らかに不相当で苛烈なものであったといえる」
《裁判長は、優里被告と、夫だった雄大被告(34)=同罪などで起訴=の行為を厳しく指弾した。次に、結愛ちゃんを保護しなかった「不保護」についての説明が行われた。優里被告らは香川県の関係機関に転居先を教えず、品川児童相談所の訪問は優里被告自らが対応して拒絶した》
裁判長「さらに、上京後は2回のごみ捨て以外、被害児童を外出させることもなかったのであるから、被害児童の生存の維持はひとえに被告人らに委ねられている状況にあった」
《しかし、結愛ちゃんが亡くなるまでの約3日間、結愛ちゃんが嘔吐(おうと)し、異常なやせ方をしていることを認識していたにもかかわらず、医療措置を受けさせなかった》
裁判長「不保護の態様は悪質で、その意思決定も強い非難に値する」
《結愛ちゃんの遺体には新旧混在する多数の皮下出血などがあった》
裁判長「被告人において、雄大によるこうした暴行をどの程度認識していたかについては、必ずしも明確ではない。しかし、少なくとも、被害児童が要保護状態に陥る前に、雄大によって被害児童の顔面がひどく腫れるような暴行が行われたことを認識しながら、『やめて』とは言ったものの、それ以上に適切な措置を講じず、結果的に雄大の暴行を容認する状態になっていた」
《最後に、結愛ちゃんの受けた身体的、精神的苦痛についての言及がなされた》
裁判長「大好きだった実母である被告人からも苛烈な食事制限を受けた上、やせ細り、嘔吐し、体が食事を受け付けなくなり、意識も薄れ重篤な状態になってもなお医療措置を受けさせてもらえないまま死亡するに至り、被害児童の感じたであろう苦しみ、悲しみ、絶望感は察するに余りある」
《結愛ちゃんはノートに「きのうぜんぜんできていなかったこと…」などと書いており、優里被告は裁判の中で、結愛ちゃんが雄大被告から怒られるのを防ぐために結愛ちゃんと一緒に書いたと供述していた》
裁判長「この中には『分かったね』などと大人が言ったことをそのまま書いたような部分があったり、被告人が誤字などを添削した箇所があるなどの点は、同供述を裏付けているといえるから、その信用性は否定されない。そうすると、このノート片の記載内容から被害児童の当時の心情をそのまま認定することはできないというべきであるが、この記載がなくとも被害児童の受けた虐待の態様などから、その心情が十分に推し量れる」
《裁判長は3つの量刑理由を説明した上で、こう断じた》
裁判長「本件は児童虐待による保護責任者遺棄致死の事案の中でも、重い部類に属するというべきであり、被告人もその中で相応の役割を果たしたといえる」
=(下)に続く