国内各地で新型コロナウイルスの感染確認が相次いでいることを受け、政府は16日、首相官邸で感染症対策の専門家会議(座長=脇田隆字(たかじ)・国立感染症研究所所長)の初会合を開いた。同会議は国内の現状について「発生早期」と評価した上で「感染経路を特定できない可能性のある症例が複数認められる」との見解を表明。重症者の治療体制の確保に重点を置く姿勢を示し、発熱などがある人の相談や受診の具体的な目安も公表することを決めた。
厚労省「感染経路が大体見えているので拡大状況にはない」
加藤勝信厚生労働相は終了後の記者会見で「患者増加の局面を想定した対策を今から取っていくことが必要」と指摘。脇田氏は「国内の感染状況がさらに進行していくことが考えられる」として、本格的な流行への備えが必要と強調した。「流行」には至っていないとの評価について、厚生労働省の担当者は「目印になるのは、感染経路が全部追えているかどうか。今は大体見えているので拡大状況にはない」と説明する。
せきや発熱などの症状がある場合、電話相談の窓口として各都道府県の保健所などに設置されている「帰国者・接触者相談センター」がある。今後、感染者が増え、不安に思う人がセンターに殺到すると、十分な機能を果たせなくなる恐れがあるため、一定の要件を示す必要が出てくる。
電話相談目安、17日にも公表
脇田氏は、新型コロナウイルスの感染者の症状の特徴として「だるさや風邪のような症状が長く続く」と説明。「風邪の症状を感じたら、まずは自宅で療養することが勧められる」とした上で、強いだるさ▽発熱▽息苦しさなど呼吸器症状――が一定程度続く場合はセンターに電話するのが望ましいとの考えを示した。
さらに、高齢者や、糖尿病、心不全、透析患者などの基礎疾患のある人、免疫抑制剤や抗がん剤による治療を受けている人は、重症化リスクが高いとして、早期の相談センターへの連絡を呼び掛けた。相談するのは発熱がどの程度ある場合か、症状が何日程度続いた場合かなどの具体的な目安を、17日にも公表する。
受診が必要な人には、帰国者・接触者専門外来が全国に約700カ所開設されているが、これを800カ所程度に増やす。患者が殺到し診療に支障が出ないよう、厚労省は医療機関名は公表せず相談センターで紹介を受けるよう求めている。【横田愛、村田拓也】
新型コロナウイルス感染症の受診・相談の考え方
▽風邪の症状を感じたら、まず自宅で療養
▽症状が長く続く場合、あるいは強いだるさや発熱、呼吸器症状が出てきた場合、軽症者は外来受診の前に「帰国者・接触者相談センター」に相談を
▽診療の重点は肺炎患者の管理
▽高齢者や基礎疾患(糖尿病、心不全、透析治療中、抗がん剤使用中など)のある人は、早めにウイルス検査を受けてもらう
▽テレワークや時差出勤など人混みを避ける行動を推奨
厚生労働省が示した新型コロナウイルスの特徴
・感染経路は飛沫(ひまつ)感染と接触感染
・一部の患者に強い感染力を持つ可能性がある
・無症状の病原体保有者がいる
・無症状または軽症の人が多い
・発熱や呼吸器症状が1週間前後持続することが多く、強いだるさ(倦怠(けんたい)感)を訴える人が多い
・高齢者や基礎疾患を持つ人は重篤になる可能性が高い
・対症療法が中心で、特別な治療法はない