「思い出の備品差し上げます」3年前閉校の小学校、1日限定で開放し「お別れ会」 滋賀・甲賀

少子化を背景に全国で公立学校の統廃合が相次いでいる。そんな中、滋賀県甲賀市で3年前に閉校した小学校が22日に「1日限定」で地元住民や卒業生らに開放される。来年度以降、民間の養殖施設に生まれ変わる計画となっており、市教委が“惜別”の機会を作った。当日は思い出の詰まった備品を無償で分け合う。
この学校は三重県境近くの山あいにたたずむ山内小。1873(明治6)年創立で、現校舎は80年3月に完成した。市教委によると、戦後の児童数は47年の288人をピークに減少傾向で、山内小が建つ旧土山町など5町の合併で甲賀市となった2004年度以降は30~40人台で推移した。
15年3月に市教委が公表した学校再編計画で、旧土山町は全4小学校を1校にまとめる統合案が示され、地元では賛否両論あったが、16年度末で閉校になった。児童数は24人まで減っていた。現在、児童は西へ約4キロ離れた土山小にスクールバスで通う。
跡地はヒラメなどの養殖場に再利用される計画で、市議会の3月定例会で議案が通れば来年度から事業が始まる。このため、市教委は地元住民らへの校舎開放と備品の無償提供を決めた。机や椅子は既に他校で再利用されており、図書室に残された本や理科室のフラスコなどが対象になる。市教委担当者は「小学校を大切な存在に思う住民のために企画した」と語る。
地元に住む元同窓会会長の吉田権栄門(ごんえもん)さん(74)は当日足を運ぶ予定だ。吉田さんが通っていた頃は木造校舎で1クラス25人いた。教室の火鉢の縁に弁当箱を置いて温めたり、教員が弾くオルガンが珍しくて「どこから音が出るんや」と友人と周りをぐるぐる回って調べたりした記憶がよみがえる。「閉校は寂しいが時代の流れでやむを得ない選択だった。最後に校内を回り、懐かしい思い出を語り合えたら」【千脇康平】
各地で学校再編計画浮上も、頓挫する事例相次ぐ
少子化が進む中、文部科学省は2015年1月、公立小中学校の適正規模や適正配置に関する「手引」を約60年ぶりに策定した。各市町村での統廃合の進め方や小規模校の充実策の検討を進める際の方向性などが示されている。小学校では6学級を下回る場合を「一般に教育上の課題が極めて大きい」とし、統廃合などの適否を速やかに検討する必要があるとしている。一方、地域の実情に応じたきめ細かな分析に基づき判断すべきだとして弾力的な対応を求めている。
全国各地で小中一貫校化を含めた学校の再編計画が浮上しているが、地元住民や保護者の反発で頓挫する事例も相次いでいる。
文部科学省の調査によると、02~17年度に廃校した公立小学校は5005校。単純計算で1年間に約300校が消えていることになる。【千脇康平】