「感染におびえた」「ほっとした」 新型コロナウイルス 下船後の思いさまざま

新型コロナウイルスの集団感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客らが3日間にわたって下船した。最終日の21日、解散場所の一つ、横浜駅東口では、クルーズ船が停泊する大黒ふ頭から運ばれた下船者らが、バスから次々と下車。電車やバスの公共交通機関を使うなどして、それぞれが帰路についた。
解散場所となった「横浜駅東口スカイビル(YCAT)前」のバス停では、午前10時半ごろから横浜市営バスの貸し切り車両が5~10分ほどの間隔で到着。下船者の多くはスーツケースなどの荷物を受け取り、足早に立ち去った。
取材に応じた下船者らからは「つらかった」「感染が怖かった」など約2週間にわたる船上の日々の苦境を伝える声が聞かれた一方、「めずらしい体験をした」などの前向きな声もあがった。ただ、口をそろえたのは、「帰宅後、周囲の人にどういう扱いを受けるのかが心配」など、今後の生活への不安だった。
■60代夫婦
夫婦でクルーズ船の旅行に参加した静岡県熱海市在住の建築業の男性(66)は、「無事に下船できてよかった」と胸をなでおろした。船上での日々について、「先の見えない不安と闘いながら過ごした」と振り返り、「高齢者もたくさんいたが、乗員らはみんなよくやってくれた」とねぎらった。
一方、感染リスクについては、「自分も感染することは覚悟を決めていた」という。「防護服姿の人が監視していて船内もうかつに歩けない。部屋で情報を待つしかなかった。今日午前1時すぎになってようやく下船を知らされたときは、本当に安心した」と話す。
帰宅後については、「陰性だと証明されているので、自分自身は気を強く持っていなくてはいけない」と表情を引き締めた。
一方、この男性の妻(69)は、「友人たちと連絡を取り合っていたので、船内での生活を乗り切れた」と振り返り、「下船できて感無量。気分転換がしたい」と喜びをあらわにした。乗船者2人が死亡したことに対しては「とてもつらい。涙が出た」とし、「陰性と結果が出たが、まだ心配。今後2週間は家族や大切な人たちと会わないと決めている」と話した。
■20代男女
交際相手との旅行だったという横浜市在住の会社員男性(23)は、感染を恐れて、「船上では自室以外にあまり外に出られなかった」という息苦しい日々を振り返った。「部屋に窓はあったけれど暗かった。太陽の光を浴びられることがこんなにうれしいなんて」と笑顔を見せた。
帰宅後は、「親からも外出するなといわれているので、2週間は自宅でじっとしていようと思う」と話し、出社も自主的に控える意向を示した。
交際相手の20代女性は、「安心した。部屋から出られなかったことがきつかった」と言葉少なだった。
■30代男性
70代母との旅行でクルーズ船に乗っていた東京都内に住む30代男性は、15日に検体を採取後、下船当日の早朝に陰性と結果が通知された。その間、検査結果についての連絡はなく、「気が張り詰めて眠れなかった。疲れているため、とにかく帰って寝たい」と疲労をにじませた。
船内の状況について、「数日前に2つ隣の部屋の人が搬送されたり、電話で船内の友人が感染したと知らされたりして、とても心配だった」。また、「感染していたのが自分かもしれないし、一歩間違えれば死んでいたかもしれない」と語った。
さらに、「船内ではどこが危なくて、どこが危なくないのか、よくわからなかった」と衛生管理の不十分さを指摘し、「感染者と接触していないとはいい切れない。今は陰性と結果が出ているが、後日に陽性に変わるかもしれない。周りの人への影響が不安」と話し、最低でも1週間は自宅で過ごすという。
■86歳女性
富山県高岡市在住の女性(86)は、「(船から)ようやく出られてよかった」と安堵(あんど)する一方、同年代の感染者2人が死亡した情報を船上で聞いたことについて触れ、「とてもびっくりした。どうしてそんなことになってしまったのか…」と声をつまらせた。
一方、自身については、「感染しないようにと周りのみなさんが気を使ってくださった」と感謝を口にした。東京駅を経由し、新幹線で帰宅するといい、「まだ長旅の途中。帰ったら大好きなピアノを弾きたい」と笑顔をみせた。