2月初旬に国内自動車メーカー各社は第3四半期決算の発表会を行った。各社の本決算の締めは3月末で、そこから資料を作成し、決算発表自体は5月に行われるのが通例だ。第3四半期決算では4月から12月まで、つまり業績的には通期の75%をカバーしていることになり、その第3四半期に立てられる通期予想は実際の着地点がかなり精密に予測されているといえる。つまり、よほどの番狂わせがない限り、通期決算の流れがあらかた分かるわかるというタイミングである。だから年に3回ある四半期決算(4回目は本決算)の中でも第3四半期はちょっと特別なのだ。
なお利益率などについては資料に掲載されていない社もあったので、それらは各社の投資家向け情報ページなどから個別に抜き出した。どうしてもやむを得ない(つまりデータが掲載されていないか見つからない)ケースでは筆者が独自に算出した。
日産
スズキ
この戦略製品が現場に届くまでどういう戦いをするのかは大変難しい。普通こういう状況は値引きで凌(しの)ぐのだが、それではマツダが6年かけてやってきたブランド価値販売が元の木阿弥である。やることとやれる時期はハッキリしているので。それまで耐えればいいのだという見方もあるが、いうほど簡単ではないだろう。
三菱
・売上高は2兆4000億円で、前年から646億円のマイナス。
・営業利益は300億円で、前年に1118億円のマイナス。
・営業利益率は1.2%で、3.2ポイントマイナス。
三菱は減収減益。構造的にはマツダとそっくりで、売上のダウンはまあ仕方ないとして、利益が問題だ。特に1118億円の減益は、売上規模に対して相当に痺(しび)れる数字。営業利益率が地獄の扉の前で徳俵に引っかかっている水準だろう。これも相当な手段で早急に手を打たないと赤字転落が待っている。
強いトヨタと厳しい日産
全体を見て、とにかくこの逆境下で強さに圧倒されるのがトヨタで、ちょっと言葉を失う厳しさに直面しているのが日産だ。スズキとマツダは日産を見るとまだ救われるが、下を見て安心していていい状況とは思えない。概要としては各社そろって、程度の差はあれど逆境である。
ではどうしてそんなことになっているのか? それはトヨタの資料を見ると見えてくる。日本、北米、アジアの3地域で販売が落ち込んでいる。マツダも日、米、中、その他で落ちている。
ちょっとマーケット特性が違うスズキはどうなのかと見れば、日、欧、印、その他の全てがダウン。ほとんど販売していない北米で増えても影響は誤差だ。
要するに世界中でクルマが売れていない。各社の自己分析では、国内に関しては台風の影響を挙げている。サプライチェーンが寸断されたという状況はそれなりに厳しかったかもしれないが、基本的に国内マーケットは微減のトレンドが続いており、これからも大きく伸張するとは考えにくい。
インドとASEANは市況が悪い、しかも回復が遅れている。そこはまあ普通に考えて循環性のものなので、いずれ回復するだろう。しかし真の問題はやはり中国マーケットだと思う。
真の問題は中国市場
中国のバブル崩壊の影響が、今年の第3四半期までの数字にマイナスの影響を与えている。ただし、その影響は意外や壊滅的なものではない。というのも、中国で自動車販売の落ち込みが一番ひどいのは中国系メーカーなのだ。ドイツ、日本、韓国の各社はまだ直撃を受けていない。この「まだ」が問題で、もし不調が日本のメーカーにまで及ぶともっと厳しいことになる。
また決算発表会では多くの記者が質問を繰り返していたが、第3四半期決算は12月までの累計であり、今大変な問題になっている新型コロナウィルス(COVID-19)の影響は織り込まれていない。
ニュースなどでは武漢の閉鎖が話題になったが、実態としては小さな行政区ごとに企業の営業をコントロールしており、例えばトヨタは延期されてきた春節を終え、ひとまず稼働体制に入った。ただし、これが一進一退しないという保証もない。上海駐在の友人によれば、長い駐在生活でも見たことがないほど街が閑散としているとのことで、ブランドストリートの店もほぼクローズドという状況らしい。
経済に与える影響は当然甚大なものになる。耐久消費財なので、買い換えが伸びたところで永遠には伸ばせない。そういう意味では、刈り取りのタイミングが変わるだけだが、決算はそれを待ってはくれない。常識的に考えて、今回発表された各社の通期見通しは、さらに厳しい結果になることがほぼ見えている。特に中国でのビジネスが大きいホンダと日産への影響はそれなりになるだろう。
ただし、それが日本の経済崩壊のようなことにつながるかといえば、おそらくそこまでのものではない。なぜなら中国の制度が結果的に日本の被害を半減してくれるからだ。
この連載ではすでに何度か書いてきたが、中国でクルマを売るためには、原則として中国でクルマを生産しなければならないし、そのためには現地資本と提携した合弁会社を設立しなくてはならない。その際、株式の過半(一般には51%)を中国側の企業が持つことになる。つまり利益が出たら51%は中国のものだが、赤字もまた51%は中国企業が負ってくれるというわけだ。だからプラスにせよマイナスにせよ、影響は限定される。
むしろ問題は、日本国内や中国以外の海外拠点での生産が継続できるかどうかにある。万が一、中国製の部品の供給がかなり長期にわたって生産が止まったり、輸送ができなくなったりすると影響は出てくるだろう。
日本の自動車メーカー各社は、関西大震災と東北大震災を契機に、かなりサプライチェーンの代替候補による冗長性確保を進めているが、その代替案を担う国まで感染が広がらない保証はないし、二次、三次のサプライヤーまで、そうした冗長性が確保できているかは疑わしい。そして残念ながら、クルマは部品がひとつ足りないだけで生産できないのだ。今後物流を制限される国がどのようになるかは全く見通せない。そもそも日本がそうした対象にならないという保証はない。
ここ1、2カ月でそのあたりが見えてくるだろうが、そういう厳しい現実を、利益率の厳しい各社が、どうやって切り抜けられるかは予断を許さない状態だ。
(池田 直渡)