平成23年に大津市立中2年の男子生徒=当時(13)=がいじめを苦に自殺した事件で、遺族が元同級生らに損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が27日、大阪高裁で言い渡される。いじめと自殺の因果関係に加え、生徒の自殺を「予見可能」と判断した1審大津地裁判決が維持されるかが焦点。判決を前に取材に応じた生徒の父親(54)は「いじめをなくし、子供の命を守る社会を後押しする司法判断を示してほしい」と話した。(杉侑里香)
■警鐘鳴らす判決を
裁判で元同級生側はいじめを否定したが、昨年2月の1審判決は証拠を基に、《ハチの死骸を食べさせようとする》《自宅から無断で時計や漫画を持ち出す》といった数々のいじめ行為を認定。男子生徒は孤立感や絶望感を募らせ「死にたいと願うようになった」と指摘、いじめ行為と生徒の自殺に因果関係があると結論づけた。さらに、追い詰められた生徒が自殺に及ぶことは「一般に予見可能な事態」とし、元同級生2人に計約3750万円の支払いを命じた。
2人は判決を不服とし、控訴していた。
これまでの裁判例では学校という閉鎖空間で起きたいじめの立証は難しく、仮にいじめと認められても「自殺は特殊な事情」という見方が根強かった。それだけに、因果関係や予見可能性も一般的なものとして認めた1審判決を弁護側は「画期的」と受け止める。
父親は「『いじめは命を奪う』という当たり前であるべき認識を示してくれた」と1審判決を評価。「無視や陰口でも子供の心は疲弊し、耐えられなくなっていく。1審判決を維持し、加害者だけでなく教員や保護者らすべての人に警鐘を鳴らす2審判決を望んでいる」と話した。
■法改正で実効性を
大津のいじめ事件を機に25年に制定された「いじめ防止対策推進法」は、いじめの防止と対処などについての責務を規定。生徒の父親は、法成立時の会見で「いま生きている子供たちを助けるために、息子が命がけで作った法律だと思う」と述べていた。
しかし30年度までの5年間で、全国で40人以上の児童生徒がいじめを原因に自殺。子供の命を守る環境整備には今も課題が残る。
総務省が29年度、いじめの定義をめぐり全国の公立校を抽出調査したところ、24%が定義よりも狭く解釈していたと公表。いじめを見逃したり、深刻な事態を招いたりする恐れがあるとして、文部科学省に改善を求めた。
一方、その後の議論は停滞したままだ。
国会議員による勉強会は、教員や学校の責務を詳細に明確化した改正法案のたたき台をまとめたが、学校関係者から「現場の負担が増す」といった懸念が噴出。このため昨年4月に示された座長試案では、大幅に条文が削られるなどした。いじめ被害者の遺族らは再検討を求める意見書を提出したが、1年近く議論は進んでいない。
法改正の活動に関わってきた父親はこの現状に、「学校や教師の立場を守る考え方が先で、子供の命を守る責務が二の次にされてしまっている」と危機感を強める。
どうすればいじめを撲滅できるのか。父親は法改正だけでなく、教員や学校現場が子供と向き合う時間を増やすため、部活動指導の外部委託などの改革も不可欠だと指摘。「未来を奪ういじめをなくし、真に子供の命を救えるようにしていかなければならない。司法判断でその動きを後押ししてほしい」と訴えている。
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大津いじめ自殺事件
平成23年10月11日、大津市立中学2年の男子生徒=当時(13)=が自宅マンションから飛び降り、自殺。学校が事件後に実施したアンケートで「自殺の練習をさせられていた」などの記載があり、男子生徒のいじめ被害が発覚。滋賀県警は元同級生3人のうち、2人を暴行などの疑いで書類送検、1人を児童相談所に送致した。家裁は2人を保護観察処分、1人を不処分にした。