新型肺炎 面会禁止や外出制限 重症化リスクの高齢者介護施設の苦悩

新型コロナウイルスによる新型肺炎の拡大を受け、高齢者施設で自衛策を強化する動きが広がっている。高齢者は罹患(りかん)すると重症化する懸念があるが、新型肺炎には有効な治療薬はないとされ、感染予防が最も重要となる。施設側は「1人でも感染すれば一気に広がりかねない」と警戒を強め、入居者の外出や家族との面会を制限するなど対策に全力を挙げるが、高齢者ケアならではの壁もあり不安の声も出ている。
「発熱していなくてもウイルスを持っているかもしれない。すごく怖い」。金沢市内で老人ホームやデイサービスなどの事業を運営する企業の担当者は危機感を募らせる。入居者や利用者はグループ全体で約100人。皆70~90代の高齢者だ。
石川県内で初の感染者が確認された21日以降、施設では入居者の外出は受診時など必要最低限に抑え、家族らとの面会も原則禁止にした。施設内で開かれる歌や踊りなどのボランティアも中止し、職員の勉強会も取りやめた。来訪者には職員が玄関で対応するなど、外部の人が極力、施設内に入らないよう気を配る。
施設が厳戒態勢を敷くのは、現時点で新型コロナウイルスに有効なワクチンや治療薬がない上、発熱などの症状が出てもすぐに診断できないという不安があるからだ。担当者は「インフルエンザならすぐに薬を服用できるが、今回はすぐに医療を受けられる態勢がないのではないか」と話す。
施設ではマスクやアルコール消毒液の在庫が少なくなり、3月中には底を突きそうだという。「仕入れ業者にも入ってきていない。3月中に終息しなかったら一体どうしたらいいのか」。施設では万一の事態に備え、ガーゼとゴムひもでマスクを手作りする準備を始めている。
一方、外出制限には踏み切れない施設もある。約30人が入居する金沢市浅野本町のグループホーム「おんぼら~と」は行事や会議などを中止したものの、職員が付き添う外出は今のところ自由にできる。長峰あゆみ施設長は「買い物を楽しみにしている人もいる。何でも制限するとストレスがたまって、かえって抵抗力が落ちるかもしれない」と対応に頭を悩ませる。
アルコールなどで施設内の消毒を徹底する一方、施設内で常にマスクを着けるのは入居者のケアの面から難しい部分もあるという。「認知症の人は、職員の表情がマスクで見えなくなると、不安に感じてしまう。とにかく職員が感染しないように気をつけている」と話す。
地域福祉にも影響が出ている。高齢者の社会的な孤立を解消しようと、地域の社会福祉協議会が体操やカラオケ、食事会などを開く「地域サロン」にも中止の動きが広がる。年間300回以上、地域サロンを開く金沢市小立野(こだつの)地区では、アート講座など3月中旬までの催しを取りやめた。担当者は「高齢者が不要な外出で感染することがないよう中止を決めた。早く終息して、また元気な姿で参加してほしい」と期待した。【阿部弘賢】