台風15号で大規模な停電に見舞われた千葉県では、停電で浄水場のポンプを動かすことができず、今も水の供給にも大きな影響が出ている。17日現在、1万戸以上が断水。自治体などは非常用電源をフル回転させて通水を急ぐが、停電が解消された地域でも通水に必要な水道管洗浄に時間がかかるなど「想定外の長期化」に関係者は頭を抱えている。
県水政課によると、同日午後3時現在、県内の断水は、5市町の1万78戸。自宅の井戸に設置したポンプが動かない家庭も多く、避難所や市役所の前には給水を待つ人が列を作っている。
北海道では昨年9月、地震による大規模停電が発生した。これを踏まえ、県内で停電時の対応を調査したところ、「非常用電源設備の確保に大きな課題があった」(同課担当者)という。関東甲信越地域の水道担当者が集まる今年10月の会議で、非常用電源の増強を国に要望する提案をしようと調整していた直後に今回の被害が起きた。
富津市や君津市など県内4市でつくる「かずさ水道広域連合企業団」では8500戸以上で断水が続く。企業団の担当者は「浄水場には数日は持つ非常用電源があるが、道路の寸断で燃料が運べない場所もある」と困惑。「老朽化した水道管や浄水施設の耐震化は進めていたが、停電対策には手が回っていなかった。ここまでの長期化は想定外だった」と話す。
約900戸で断水が続く多古町の担当者は「自家発電機をフル稼働しても配水需要には追いつかない」と語る。非常用自家発電装置は長期間の使用を想定した設計ではなく、「連続で使い続けると故障の恐れもある。電力供給が正常に戻るまでは不安定な運用をせざるを得ない」と嘆いた。
非常用電源の確保には限界もある。東洋大学の鈴木崇伸教授(ライフライン工学)は「水道事業は独立採算制。コストを水道料金に転嫁せざるを得ない中で非常用電源をどこまで整備するかは難しい問題だ」と話している。