「会いたい!」 1通の手紙が呼んだ「なまはげ」 千葉の小さな保育所

≪なまはげさんのことがもっと知りたいです。
だから本物のなまはげに会いたいです!。佐貫保育所に来ないかな~。≫。0~5歳児まで20人という千葉県富津市の小さな保育所の子供たちが出した1通の手紙に応え、秋田県男鹿(おが)市からなまはげが同保育所を訪れ、望みをかなえてくれた。子供たちは初めてのなまはげに興奮した。最近は「なまはげさんが見てくれているから頑張ろう」との“教育効果”も出ているという。
保育所の子供たちの間でなまはげが人気になったのは昨年秋。3歳の男児が動画投稿サイト「ユーチューブ」でなまはげを見たのがきっかけとなり、4人しかいない3歳児(男児3人、女児1人)がまねて遊ぶようになった。そのうち保育所全体でブームに。「なまはげさんのことが知りたい」。子供たちのお願いで保育士も本などで調べ、教えているうちに昨年末の発表会で4人の3歳児がなまはげを演じた「なまはげのおおみそか」という劇を披露するほど子供たちは詳しくなった。「本物のなまはげさんを見たい」。子供たちの思いは強くなる。子供たちの思いを聞き取って保育士が男鹿市に手紙を送ったところ、1月下旬に同市からなまはげが来てくれることが決まった。
待ちに待った2月28日、赤と青の面にみのをまとったなまはげが子供たちの前に現れた。演じたのは同市の男性職員2人。「泣ぐ子はいねが~、悪い子はいねが~」。迫力に怖くて震えたり、泣き出す小さな子供がいる一方で「かっこいい、かっこいい」とヒーローを見るような目で見つめる子供も。「なんで山に住んでいるんですか」「パパとママはいるんですか」…。日ごろの疑問をぶつけた。年末になまはげを演じた3歳児の4人は、「(大みそかになまはげを家にあげて行う)お膳を出してお酌したい」などとお願いした。「強くてかっこいい なまはげ大好き なまはげみんなの守り神」と、3歳児以上の子供たちは保育士と作った「なまはげのうた」も披露。あっという間の2時間だった。
「本物のなまはげに会えた子供たちは、さらに熱が入って秋田弁ぽくしゃべったり、本物そっくりにうなり声を出しています」。本物に会った後の子供たちについて総括保育士の棟方淳子さんはそう話す。「でも一番の変化は、“お山からなまはげさんが見てくれているよ”と言うと、子供たちがちょっとしたことでも頑張ろうと思ってくれるようになったことかも」。
保育所を訪れた男鹿市文化スポーツ課の伊藤直子さんは「男鹿で、なまはげは、子供たちにはおそれられ、そんなに喜ばれないので驚いている。しかも佐貫保育所の子供たちは、文化財としてのなまはげを調べてどんどん好きになってくれている。手紙のやりとりなどができるといいと思っている」と話している。
なまはげ 怠け心を戒め、無病息災や田畑の実り、海の幸などをもたらす、年の節目にやってくる来訪神。おおみそかの晩に秋田県の日本海側に面した男鹿半島のほぼ全域で行われ、集落の青年たちが扮(ふん)し、「泣く子はいねが~、親の言うこど聞がね子はいねが~」と家々を巡る。迎える家では、昔から伝わる作法で料理や酒を用意してもてなす。昭和53年に「男鹿のナマハゲ」として重要無形民俗文化財に指定、2018(平成30)年にユネスコ無形文化遺産「来訪神:仮面・仮装の神々」のひとつとして登録された。