新型コロナウイルスの感染拡大で多くの小学校が臨時休校となる中、大阪市では子供の居場所をめぐって保護者らが頭を抱えている。
市では30年近く前から、放課後に空き教室で児童を預かる独自の施策を実施。民設民営の放課後児童クラブ(学童保育)より圧倒的に利用者が多いという“特殊事情”がある。厚生労働省は休校に伴い、学童保育については原則開所するよう各自治体に要請したが、市独自の預かり事業は休止になり、保護者らに戸惑いが広がっている。
市の独自施策は「児童いきいき放課後事業(いきいき)」。市内の小学生約11万5千人のうち、登録児童数は半数以上の約6万5千人で、1日1万~2万人の児童が利用している。一方、厚労省によると市で学童保育に登録している児童は約6千人(昨年5月現在)。他の政令市である神戸市は約1万5千人、京都市は約1万4千人に上っているのに比べると、大阪市で児童の受け皿となっているのは圧倒的に「いきいき事業」だ。
■やむなく有休取得
「うちにとって『いきいき』はなくてはならないもの。頼りにしている保護者は他にもたくさんいる」
小学2年の長女と2人暮らしで、フルタイムで働く大阪市天王寺区の女性会社員(46)はため息をつく。長女は放課後、校内のいきいき事業が行われる教室で過ごし、仕事が終わった夕方、女性が迎えに行くのが日課。だが、新型コロナの影響で休止となったため、女性は有給休暇を取得し、家で長女の面倒を見ることにした。
同様の家庭は多いとみられ、松井一郎大阪市長が2月29日からの臨時休校を表明すると、各学校には「いきいきも休止するのか」といった問い合わせが相次いだ。市内の学童保育はほとんどが継続しているとみられるが、市担当者は「『いきいき』も継続だと勘違いした人も多かったようだ」と話す。
事業が始まったのは平成4年度。市内にある全市立小学校288校の空き教室を利用し、原則無料で校区内の児童を預かる。特徴的なのは親の就労の有無や理由にかかわらず利用できること。文部科学省によると、こうした取り組みは全国でも珍しいという。
■「臨時休校中はできない」
一方、厚労省によると、学童保育の設置・運営主体の約8割が「公立公営」か「公立民営」だが、大阪市の場合は民設民営で有料。民家やビルの一室などで運営され、午後9時半まで預かりが可能なところもあるほか、学習塾としての機能を備えている施設も多い。だが、市内の女性会社員(34)は「小学生がいる親にとって『いきいき』は無料だし、本当に便利。休止となってがっくりした」と話す。
松井市長は「子供の感染拡大を防ぐため臨時休校とする中、校内で『いきいき』だけ実施するということはできない」と指摘。臨時休校中も「ひとり親家庭や親が共働きなどで一人で自宅待機できない児童は、各学校で預かるので、利用してほしい」と理解を求めている。