千葉県野田市の小学4年だった栗原心愛さん(当時10)が虐待を受け、死亡した事件。傷害致死罪に問われた父親の勇一郎被告(42)に対する裁判員裁判は、2月21日に始まり、3月19日、「尋常では考えられないほど、凄惨で陰湿な虐待だった」として懲役16年(求刑18年)の判決が言い渡された。虐待する様子をスマートフォンで撮影し、次第にエスカレートしていった被告の虐待行為を「嗜虐の度を高めた」などと非難した。
判決の読み上げは1時間以上にわたった
「主文。被告人を懲役16年に処する」
千葉地裁の前田巌裁判長が判決を言い渡すと、勇一郎被告は裁判長に向かい、深々と頭を下げた。
勇一郎被告のお辞儀。全10回の公判では、勇一郎被告が入退廷の際に毎回、傍聴席や裁判長などに対し、時間をかけて深く礼をするのが恒例となっていた。検察官が被告人質問で、礼の意味を問うと被告は「心愛に対してです」と答えた。
だが、今でも大半の虐待を認めていない被告の発言を鑑みれば、心愛さんに対する謝罪の気持ちを読み取ることはできず、証人として出廷した被告の妻で心愛さんの母(33)が被告の性格を「家族には自己中心的だったが、他人には自分をよく見せようとする」と表現した、そのものに見えた。
判決の読み上げは1時間以上にわたった。前田裁判長は時折、声を震わせながら、「酌量の余地はみじんもない」などと勇一郎被告を厳しく非難した。判決は、心愛さんが死亡した傷害致死事件など、起訴されている6つの事件すべてを認定。
心愛さんが死亡するまでの経緯で、大半の起訴内容や証人の証言とは食い違っていた被告の主張を「脈絡に欠けて不自然、不合理」「都合の良いことをつまみ食い的に話していて信用できない」などと退ける形となった。
最後の食事は1人、夜通し立たされ何度も冷水を……
心愛さんは死亡する2日前の夕食に、ファミリーレストランの出前のチーズ入りハンバーグを食べたのが最後の食事となった。それも、父母といっしょにリビングで食べることはできず、1人寝室で食べさせられた。以降、まる2日、食事は与えられず、22、23日の夜は夜通し立たされた。
しかも23日の夜は、真冬の浴室で洋服を着るのも許されず、肌着1枚だった。その日の昼間も、被告が病院へ行く間、浴室でその場で「駆け足をしろ」と無意味なことを言われ、帰宅したときにやっていないのが見つかるとさらに暴力を振るわれた。
死亡当日の午後も、ただでさえ肌着1枚で寒かったのに、頭から何度も冷水をかけられた。夜、寝ようと寝室に入ると、「寝るのはダメだから」と浴室に引っ張られ、シャワーの冷水を顔にかけられ絶命した。判決では、被告が心愛さんを「強度に衰弱させることも構わないと考えていた」としている。被告は傷害致死罪に問われたが、10歳の心愛さんにかけた追い打ちは、殺人に近いと言える。
心愛さんに責任を押し付けた
勇一郎被告は初公判で「みーちゃん、ごめんなさい」と涙を流して謝罪し、最終陳述でも、亡くなった心愛さんを「永久に弔いつづける」「罪と向き合い、一日一日、必死に償います」と述べた。
だが、心愛さんを長時間立たせたり、屈伸させたりしたことについては、「心愛がやると言ったのでやらせた」と主張し、心愛さんに責任を押し付ける法廷での態度を見ていると、謝罪の言葉も深い礼も空虚なものに映った。
もし、勇一郎被告が本当に心愛さんを弔い、罪を償う気持ちがあるのなら、塀の中で過ごす16年間、毎朝冷たい水で洗面するたび、真冬に冷水をかけ続けられて衰弱した心愛さんのことを思い出してほしい。どれだけ冷たかったか、どれだけ孤独だったかを感じてほしい。
(村田 珠里/週刊文春デジタル)