オープン70年の競輪場、インバウンド狙いホテル計画もコロナ直撃 漂う暗雲

岡山県玉野市が1950年に開設した市営の玉野競輪場にホテルが併設されることになった。老朽化した施設の改修に伴い、外国人観光客を呼び込み、競輪ファンの裾野を広げる狙いだ。6月に整備を始め、2022年3月の開業を目指すが、新型コロナウイルスの影響で観光客は減少続き。近年はインターネットによる車券購入も進む。市の担当者は「感染拡大の影響でネット購入が更に拡大すれば、来場して楽しむ文化が衰退するかもしれない」と危惧する。
計画では、老朽化が進むスタンドの一部を改修してホテルを併設する。場内にビュッフェ形式のレストランを設置。キャッシュレス端末を導入し、バリアフリー化も進める。改修費は市が20億円を負担する。
市は競輪場の運営を4月から、競輪やオートレースの運営実績がある「チャリ・ロト」(東京都)に委託。改修やホテル建設も同社が実施する。民間研究機関「国際カジノ研究所」(東京都)の木曽崇所長は「官民一体で公営競技場に投資する事例はあまりない。IR(統合型リゾート施設)誘致が進む中、新しいレジャー施設のあり方を探る面白い取り組みだ」と話す。
ただ、競輪を取り巻く環境は楽観できない。経済産業省によると、全国の競輪場の1日当たりの入場者数は08年は2516人だったが、17年は1499人と約4割減。場内の売り上げは1218億円から291億円に激減した。競輪を統括する公益財団法人JKA(東京都)によると、競輪場は最盛期の52年に全国62カ所あったが、19年度には43カ所に減った。娯楽の多様化や若者のギャンブル離れ、ネット投票の導入などで客足が遠のいているという。
玉野競輪場も10年、開設以来初めて赤字に転落するなど経営は楽ではない。15年には夜間に無観客で開催する「ミッドナイト競輪」を開始。日中に来場できないネット購入のファンを取り込んで16~18年、3年連続で約6億円の黒字を確保した。更なるテコ入れ策が大規模改修だった。
岡山県を訪れる外国人観光客は13年度約9万人から18年度約36万人と4倍に急増している。10年から瀬戸内海の島々で3年に1度開催される現代アートイベント「瀬戸内国際芸術祭」も国際的に人気で、19年には、島々は米紙ニューヨーク・タイムズ電子版で「行くべき旅行先」に選ばれた。玉野競輪場はフェリー発着場の宇野港に近く、市の担当者は「国内外から誘客を見込める抜群のロケーション」とアピールする。
ホテル経営は、世界的建築家の安藤忠雄氏が建築・設計したホテル「瀬戸内リトリート青凪(あおなぎ)」(松山市)などを運営する「温故知新」(東京都)が受託する。地元住民向けに盆踊りや花火大会などのイベントも行う予定で、チャリ・ロトの担当者は「開かれた競輪場を目指す。若者や女性など、これまで競輪に触れてこなかったような客層に知ってもらえれば」と未来像を描く。
新型コロナウイルスの影響で観光客は減り、玉野競輪でも無観客開催が続いて収益は減少している。玉野市の担当者は「先進的な取り組みで注目を集め、客足が戻ることを期待している」と話している。【益川量平】