「五輪延期すべき」論の“火付け役” 山口香JOC理事が「密室」の外で声をあげた理由

東京五輪がいよいよ盛り上がってきた。
「五輪通常開催『されない』オッズ1.17倍 『される』4.5倍と大差」(スポニチ3月23日)
もう欧州のブックメーカーでは賭けの対象にされてるらしい。ついでに「森喜朗会長がマスクをしないで最後まで頑張る」「頑張れない」のオッズもほしいところ。
ついに、安倍首相も国会答弁で
「安倍首相『オリンピック、完全な形困難なら延期判断も』参院予算委で」(毎日新聞WEB3月23日)
考えてみれば「東京2020」は下世話さが常につきまとっていた。
たとえばこれ。招致成功直後の記事。
「安倍首相と猪瀬都知事 東京五輪大会組織委人事で足並みに乱れ」(スポニチ2013年10月12日)
安倍首相は大会組織委員会会長に森喜朗元首相を充てる方向で調整しているが、東京都の猪瀬直樹知事は「人選はぼくのところでやる」と否定したというのだ。揉めてます。
《猪瀬氏は都庁で取材に「人選は安倍首相がやるわけではなく、ぼくのところでやる」と森氏の起用を否定。その上で、「(会長は)東京都とJOCで決める。いろんな人が今、こういう時期に便乗して出てくる」と不快感を表明。》
猪瀬都知事キッパリ!
しかしこの直後に猪瀬氏に「徳洲会・5000万円」スキャンダルが発覚。五輪招致成功の絶頂からわずか3カ月で辞任。会長に就任したのは森喜朗氏。アスリートよりまず目立ったのは政治の話題だったのである。
誰がいつ「ザハ案白紙撤回」を発表したか?
新国立競技場のザハ・ハディド案が白紙撤回のときも政治が目立った。当時の下村文科相は15年6月29日、総工費を当初の2倍近くの2520億円と公表。批判が沸き起こった。
では誰がいつ白紙撤回を発表したか。去年の検証記事を見てみよう。
《総工費高騰の批判が強まる中、国会は安全保障関連法案の重要局面を迎えていた。同案は7月16日に衆院で強行採決されると、翌17日に安倍晋三首相は突然、計画の白紙撤回を表明。ラグビーW杯での活用は断念された。》(毎日新聞2019年12月1日)
あのとき安全保障関連法案の採決に対して批判が高まっていた。するとその翌日に「ザハ案白紙撤回」を安倍首相が発表したのだ。見事なあわせ技である。
新国立競技場は完成したけど五輪の後利用をどうするという問題がある。しかし「そもそもの問題は、後利用を考えず建設したことにある」(毎日)。それだけあのときは撤回ありきだったともいえる。
こうしてみると東京五輪・パラリンピックは常に政治案件だったことがわかる。
いや、招致の前からそうだった。
IOCに対し今回の日程を「晴れることが多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候」と大ウソついて招致した。なぜそこまで?
「神宮外苑 高層化なし崩し」(朝日新聞2019年7月25日)
という記事を読むと、
・「都心最後の一等地」と言われた明治神宮外苑地区一帯でいま、高層ビルが「雨後のタケノコ」のように生まれている。
・地区の景観を半世紀ほど守ってきた建築物の高さ制限が緩和されたため。
・呼び水になったのが東京五輪の招致だった。
とある。
美しい景観を守るために高さ制限「15メートル」だった明治神宮外苑が新国立競技場をつくることで一気に「80メートル」に引き上げられたのだ。これによって新国立の建設を中心とした神宮外苑の再開発が可能になったのだ。
もしかして新国立競技場は“アリバイ”として使われたのか?
「マラソン札幌開催へ変更という“妙な東京五輪” 招致で本当に得をしたのは誰だ?」 (文春オンライン2019年10月25日)
もともと神宮外苑の再開発をド派手にやりたい意向があちこちにあった。その「悲願」を実現するために東京五輪招致は必要だったとも思える。
忘れちゃいけないのは「東京五輪・パラリンピックの招致を巡り、フランス捜査当局が日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長の贈賄疑惑で捜査を開始」という件だ。最初から政治的な匂いが漂っていたのだ。
山口香JOC理事が「五輪、延期すべき」
竹田JOC会長が退任したあと新会長に山下泰裕氏が就任。先週そんな山下JOC会長が「不快感」を示した。これ。
「JOC理事の山口香さん『五輪、延期すべき』」(朝日新聞デジタル3月20日)
JOC理事でソウル五輪女子柔道銅メダリストの山口香氏が「アスリートが十分に練習できていない状況での開催は、アスリートファーストではない。延期すべき」との考えを示したのだ。
これに対し「山下会長不快感」(サンスポ3月21日)となったが、アスリートファーストに立って考えを述べた山口氏のほうを正論と世の中は受けとめた。
山下氏といえばJOC 理事会を報道陣へ非公開にすると決めたという話題も去年あった。
すると山下JOC会長の提案に対し、採決で反対したのは「4人」。その名前は、
・小谷実可子(シンクロナイズドスイミング88年ソウル五輪銅メダリスト)
・高橋尚子(マラソン00年シドニー五輪金メダリスト)
・山口香(柔道84年世界選手権金メダリスト)
・山崎浩子(新体操ロサンゼルス五輪代表)
《いずれも女性。普段の公開の理事会でも積極的に発言する顔ぶれだった。》(毎日新聞2019年8月26日)
そもそも竹田前会長の問題は公共性の高い組織や人物が裏で何をしていたのかという点だったのにまたしても「密室」にこだわった山下JOC会長。
そして今回も山口香の正論が放たれ、山下が一本とられた形になった。五輪絡みではおじさんたちの古さしか目立たないのである。
なぜ「呪われた五輪」になったのか?
東京五輪・パラリンピックは本当にアスリートファーストなのか。次の記事を読んで欲しい。
「パラスポーツ 感染に恐々 健常者よりリスク高く」(毎日新聞3月21日)
《新型コロナウイルスの感染拡大は、東京パラリンピックを目指すパラスポーツ選手にも大きな影響を及ぼしている。重度の障害のある選手が感染により肺炎を引き起こすと重症化する恐れがあるだけに、事態は深刻だ。》
アスリートファーストなら真っ先に考えられなければいけない件だ。しかし、やれ経済損失がどうとかが今も大声で話されている。
麻生太郎氏は「呪われた五輪」と言ったが、政治の話しか出てこないから呪われるのだ。
東京2020が政治家の見栄とか経済があいかわらず前提だと言うなら、もうやめたら?
(プチ鹿島)