五輪延期、肩落とす区幹部「誰も経験したことのない1年」

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京五輪は1年程度延期される見通しとなった。開幕まで4か月に迫った時期にもたらされた大きな方針転換。前代未聞の事態に、自治体関係者や大会ボランティアの受け止めには困惑や希望が入り交じった。
「準備するだけ」
「誰も経験をしたことのない1年になる」。東京都中央区のある幹部は、「大会延期」の知らせに肩を落とした。
同区の晴海地区には選手村が設置される。大会後、跡地は約1万2000人が暮らす「HARUMI FLAG(ハルミフラッグ)」に生まれ変わり、区は大会後に小中学校などを新設する予定だった。2023年春開校のスケジュールは見直す必要もある。関連イベントや大会期間中の選手と区民のふれあいイベントも変更を迫られる。
この幹部は「すぐに関連業者との調整に取りかからないといけない。ここ数日で二転三転したが、区民や観光客に楽しんでもらうために準備するだけだ」と話した。
7月24日の開会式当日に聖火が巡る予定だった新宿区。区は聖火ランナーの背景に新宿副都心の摩天楼がそびえる「カメラ映え」を意識したルートを都に提案して認められた。担当者は「聖火リレーの記録映像に活気ある新宿の街並みが映り、レガシーとして後々に残ることを期待している。延期となれば大変だが、多くの観客が集まる本来の形で実施された方がいい」と冷静に受け止めていた。
「どうなるのか」
大会ボランティアに内定していた練馬区の中学校教員(26)はテニス会場の有明テニスの森公園(江東区)で観客誘導などにあたることが決まり、近く研修を受けることになっていた。「延期後にボランティアに携われるか情報もなく、どうなるかわからない」と不安そうに話した。
今月の東京マラソンでもボランティアとしてコースの交通整理をしたが、規模縮小の影響で沿道に観客がほとんどいなかったという。東京五輪も無観客での開催や海外選手の不参加が相次いだらどうしようかと心配していたといい、「選手や観客の不安を一掃して開催してほしい」と話した。
一方、大会ボランティアに内定した別の女性は「通常開催でなくなり残念だが、五輪に携われるチャンスは残っていると思いたい」と期待を込めた。女性は語学力を生かして世界中からの訪日客の案内をすることを楽しみにしているといい、「状況を考えると延期は仕方がない。延期になっても五輪に関わりたい思いは変わらない」と話していた。
評価の声も
都民からは様々な意見が聞かれた。大田区の会社員(46)は「延期した結果、出場を逃す選手が出てくるかもしれないが、100%みんなが満足できる判断はない。地球規模で状況が日に日に悪化している中、最善の判断ではないか」と評価。立川市の無職の男性(74)は「延期はやむを得ないが、東京五輪出場にかけてきた選手たちが気の毒。なるべく選手に負担がかからない開催方法を検討してほしい」と思いやった。