パラリンピック延期「バリアフリー改善期待」早期収束願う声も より確かな共生に向けて

「多様性と調和」をコンセプトに盛り込んだ東京オリンピック・パラリンピックの延期が決まった。障害の有無などに関わらず認め合う「共生社会」の実現を目指してきた人たちからは、「大会まで時間が空いた分、バリアフリーのさらなる改善に期待したい」と望む声が聞かれた。
「選手や関係者にとっては大変な事態だと思う。ただ、もう1年あれば共生社会にさらに近づけるという意味では歓迎だ」。頸椎(けいつい)損傷と脳幹血腫の影響で四肢にまひがあり、車いすを利用している石川明代さん(53)=東京都大田区=は大会延期を前向きに受け止める。
障害や差別とは何か考える「障害平等研修(DET)」の講師を務める。昨秋以降、オリパラのボランティア向け講習を実施しており、参加者の反応には手応えを感じている。
ただ、外出時のタクシーや電車の乗り降りは依然スムーズではない。新型コロナウイルスを巡っては、感染者らに対する差別的な言動も明るみに出た。
石川さんは「今も差別意識や社会の中の障害は根強い。オリパラの開催国にふさわしい多様性を認める社会になるにはまだ時間が必要だ」と話した。
筋ジストロフィーで車いすを利用している渡辺惟大(ただひろ)さん(33)=千葉市=は2016年から、パラスポーツの応援や普及に取り組み、障害者への理解が進む様子を肌で感じてきた。「大会が延期されてもこれまでの積み重ねは消えない」としつつ、「安心して暮らせる社会でなければ自分のことに精いっぱいになり、障害者など少数者への配慮は二の次になる」と語り、感染の早期収束を願った。
秋田市の特別支援学校高等部1年、伊藤元気さん(16)は脳性まひで車いすを使う。19年春に発足した地元のボッチャクラブに所属。トップ選手のプレーを見ようとパラリンピックのボッチャも観戦予定だった。「気持ちの盛り上がりはいったん途切れる」と話す。
小学校時代は普通校に通い、健常者の友人に囲まれていた。母の由子さん(49)は「パラリンピックやボッチャを通じて学べるものも多いが、障害者の理解には、(元気さんの)小学校時代のように健常者と障害者が普段から一緒にいることが一番大事だと思う」と強調し、日ごろの取り組みに期待を寄せた。【斎藤文太郎】