【ここがヘンだよ日本国憲法】「緊急事態」対応迅速な台湾と日本の違いは? 戦争、大恐慌、災害…“有事を想定”していない日本国憲法

中国発の新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、台湾の蔡英文総統は「中国からの入境禁止」「クルーズ船の寄港禁止」などの厳格な対応を進めている。その結果、世論調査で支持率が急上昇した。
台湾のテレビCMでは、医師自ら、マスクの着用や、手洗いの励行、罹患(りかん)したと認められた場合の対応などを繰り返し訴えている。
大型のイベントはおおむね予定通り行われているが、それは感染ルートが把握されており、感染者の隔離対応が徹底されているからだ。また、マスクの流通は政府の管制下に置かれ、週に一度、身分証の下ひとケタの数字が偶数か奇数かで決められた曜日に、本人がマスク2枚を受け取れるようにもした。
なぜ、台湾はこうした緊急事態への対応が迅速なのか?
1999年に台湾で大地震(921大地震)が発生した。このとき、当時の李登輝総統は、非常に手際良く対応した。李総統にそのようなことができた最大の理由は、台湾・中華民国憲法に記された「非常事態対処規定」にある。
中華民国憲法は、第43条で、以下のように記している。
「国家に天災、疫病が発生し、又は国家財政経済上重大な変動があり急速な処分を必要とする場合は、総統は、立法院休会期間中にあっては、行政院会議の決議を経て緊急命令法により、緊急命令を発布し、必要な処置をとることができる。ただし命令発布後1カ月内に立法院に提出して追認を求めなければならない。立法院が同意しないときは、その緊急命令は、直ちに効力を失う」
それに比べて、日本国憲法の最大の問題は、有事を想定して書かれていないことである。
日本国憲法を読めば分かる通り、平時のときのことは書いてあるが、いざ他国から攻撃を受けるなど、有事になったときにどうすればいいのか、その点については何も書かれていない。
戦争をどう抑止するか。そのための軍隊の規定もない。また、首相が不在のときに誰が代わりをするのか、その規定もない。非常事態になったときに、どうするのか、憲法を読んでもまったく分からない。現在の日本国憲法には、非常事態における包括的な原則が記されていない。
非常事態とは、戦争・内乱・大規模暴動だけでなく、大恐慌などの経済的混乱、さらには自然災害、伝染病蔓延(まんえん)などの事態も含む。非常事態の規定がないのは、国民生活の混乱に対して何もできないことを意味する。
1890(明治23)年に施行された大日本帝国憲法にも、こうした場合を想定して非常事態に関する規定があった。
『憲法の正論』(西修著、産経新聞出版)には、「1990年以降制定された各国憲法(104カ国か)全てに国家緊急事態対処が入っている」とある。
いうまでもなく国家の独立、国民の生命と財産を守ることは、極めて重要な政治の責務である。
■田村重信(たむら・しげのぶ) 1953年、新潟県生まれ。拓殖大学卒業後、宏池会(大平正芳事務所)を経て、自由民主党本部勤務。政調会長室長、総裁担当などを歴任する。外交・国防・憲法・インテリジェンスのスペシャリスト。日本国際問題研究所客員研究員、拓殖大学桂太郎塾名誉フェロー、パトリオットTVメインキャスターなどを務める。著書に『ここが変だよ 日本国憲法!』(内外出版)、『秘録・自民党政務調査会16人の総理に仕えた男の真実の告白』(講談社)など多数。