新型コロナウイルスの感染拡大を受け政府が緊急事態宣言を出せば、対象地域の知事は、大型店舗の営業自粛といった対策をとれる。住民は一定の不便を強いられるが、食品や日用品を扱うコンビニエンスストアやスーパー、住民の足となる鉄道などは基本的に営業を継続。暮らしに最低限必要な“社会インフラ”は守られる見通しだ。
■スーパーは基本的に、通常営業
「われわれは社会インフラの役割を担っている」
こう語るのは、コンビニ大手ローソンの広報担当者だ。同社は、基本的に通常営業を維持。もっとも、自治体などの方針に従い、店によっては時短営業や臨時休業する可能性がある。セブン-イレブン・ジャパンも「可能な限り営業は続けていく」としている。
一方、延べ床面積が1千平方メートルを超える店は、知事が営業中止などを指示できる。百貨店や大型ショッピングセンターは食品売り場などを除き、閉まる可能性がある。
エイチ・ツー・オーリテイリング、近鉄百貨店など百貨店大手は緊急事態宣言の内容が判明し次第、対応を検討する。総合スーパー「イオン」を全国展開するイオンリテールも「緊急事態宣言を想定して準備は進めている」としつつ、欠品しないよう留意しながら、基本的には通常営業を続ける方針だ。
住民がお金を下ろすのに困らないよう、多くの金融機関も支店やATM(現金自動預払機)の営業を続ける方向だ。三菱UFJ銀行は「通常通り全店を開ける方針」。要請があれば一部店舗で窓口業務の人員を削るなどの対応を検討する。
■鉄道は基本的にダイヤ維持
交通機関のうち、JRや大手私鉄は特措法で「指定公共機関」と位置付けられ、業務を継続する責務を負っている。緊急事態宣言が出されても基本的に通常ダイヤを維持する。ただ、政府が首都圏の鉄道各社に対する減便の要請を検討していることが判明。各社は要請が出た場合、ダイヤの見直しを検討する方針だ。
JR東日本の幹部は「宣言が出ても医療従事者ら鉄道を必要としている人はいる。電車を動かすという責務がある」と強調。ただ、「状況によっては間引き(減便)も考える」とする。JR西日本も、「(宣言を受けて)仮に減便などの対応を取ったとしても、通勤の足として電車が利用できないようなことはない」としている。
エネルギー供給も重要で、各社は、担当職員が感染し、供給に支障が出ないよう配慮。東京ガスは、すでに都市ガスの製造供給にかかわる人員について、電車通勤を禁止し、マイカー通勤、レンタカーの利用に切り替えた。大阪ガスは「訪問営業など不急な業務は縮小する可能性はある」としつつ、供給、ガス漏れなどの緊急対応に必要な人員を配置している。
■医療、臨時施設を設置も
子供は家庭で過ごす時間が続きそうだ。
緊急事態宣言が出されると、都道府県立高校などは知事の判断で休校に、幼稚園や大学、私立学校のほか区市町村立の小中学校などは知事が休校を要請・指示できるようになる。
大阪市教育委員会は、市立幼稚園と小中学校で、7~10日に行う予定だった入園式と入学式を延期した。緊急事態宣言が発令される見通しになったことを踏まえたものだ。8日の始業式も当面、延期する。ただし、必要がある場合の学校での子供の受け入れは継続する考えだ。
一方、医療は、国立病院機構や日本医師会、主要な病院団体が「指定公共機関」になっており、医療提供のための措置を講じる義務を負う。感染者数の増加で病院が収容能力を超えると、重症でない人は自宅療養を求められる。それでも足りない場合、知事は「臨時の医療施設」をつくらなければならない。病院敷地外に設置するテントやプレハブ、公共の体育館や公民館のほか、ホテルなどが想定されている。