こんなに渋谷から人がいなくなるとは…記者が見た緊急事態宣言発令された夜

緊急事態宣言が官報で公示され効力が発生した7日午後11時39分、街を覆っていたのは過去にない静寂だった。東京・渋谷スクランブル交差点での取材を続けてきた増田寛記者が日本一騒がしいことで有名な現場を「見た」。
2018年のハロウィーンや昨年のラグビーW杯・南アフリカ戦で善戦した時など、東京・渋谷の“バカ騒ぎ”を取材してきたが、緊急事態宣言が発令された7日夜、人は家路を急ぎ、街は活気を失った。
一昨年のハロウィーンでは、約100万人の参加者が殺到し、身動きが全く取ることができなかった渋谷センター街は打って変わって閑散とし、小池都知事の外出自粛を呼びかける音声が響き渡っていた。中には「こういう時だからこそ、飲みに行きてぇよな」と居酒屋に赴く無鉄砲な若者は一握り。路上に立つ4人組の客引きは「さすがに今日は来ねぇ」と暇を持て余し、スマホをいじり続けていた。
営業していた飲食店は、入店している人が目立つほど閑散としていた。日をまたいで営業する店は少なく、本来なら朝8時まで営業しているファミリーレストランも、午後11時まで。160席ある店舗だったが、席の間隔を空けるために、半分以上の席がつぶされていた。個人経営の居酒屋を営む店主は、午後8時に閉店し、「営業するだけ損。いつまでこんな状況が続くんだ」と不安が口をついた。
1回の青信号で多い時に3000人が行き交う渋谷スクランブル交差点は、ただの大きな横断歩道へ様変わり。この日の午後11時30分頃には、30人しか横断しない時もあった。渋谷の清掃活動をボランティアで10年近く行ってきた60代男性は、「ゴミが少なくなって楽だけど、こんなに渋谷から人がいなくなるとは…。大型テレビから流れる音量がこんなに大きいとはね」と、人の少なさに驚いた。
8日午前0時が近づくにつれ、渋谷の人はまばらに。乗客を求めて走るタクシーのヘッドライトが人けのないハチ公広場を照らした。(増田 寛)
◆8日から臨時休業などする主な店舗
▼三越伊勢丹 三越日本橋本店や伊勢丹新宿本店、伊勢丹浦和店など首都圏にある6店舗全館。宣言の対象外の地域を含む7都県の小型店27店も。
▼J・フロントリテイリング 大丸東京店や心斎橋店など4都府県の7店。大丸須磨店など2店は食品フロアだけ営業。
▼松屋 銀座と浅草店。
▼東武百貨店 池袋本店と船橋店。
▼イオン 7都府県のイオンモールやイオンショッピングセンターなど57施設の専門店。総合スーパーや食品スーパーは営業。
▼イトーヨーカ堂 5都府県のショッピングセンター「アリオ」「グランツリー」の専門店を休業。食品売り場は全店営業。
▼パルコ 渋谷店など4店。他の7店は一部店舗営業。
▼丸井 9都府県で、食品を扱う店舗だけの営業や全館休業。
▼DDホールディングス 居酒屋「わらやき屋」やアミューズメント施設など国内472ある直営店の営業を20日まで。
▼コロワイド 居酒屋「北海道」「甘太郎」など384店舗を5月6日まで。
▼ビッグエコー 7都府県の311のカラオケ店と飲食店115店を5月6日まで。7都府県以外の店舗も26日まで。
▼「吉野家」「すき家」 深夜営業時間を短縮。
▼力の源ホールディングス ラーメン店「一風堂」など7都府県の93店舗。
▼ラウンドワン 全103店舗を5月6日まで。
▼マルハン 運営するパチンコ店7都府県の全101店舗。