架空請求詐欺捜査の手がかりに「料金後納郵便」注目 日本郵便は困惑

公的機関を装い、現金を振り込ませる「架空請求詐欺」に使われたはがきに、郵便局の窓口で手続きが必要な「料金後納郵便」が使われる事件が相次いでいる。郵便局は犯行前の詐欺グループと接点を持ち、不審なはがきの発送を防げれば、事件抑止につながる可能性がある。捜査当局は、郵便局の役割に期待を寄せるが、局側は郵便法が定める「信書の秘密」を理由に及び腰だ。
「消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ」。昨年10月15日ごろ、愛知県瀬戸市の80代女性の自宅に、差出人に「法務省」と書かれたはがきが届いた。女性に債務があることを告知する内容で、担当者に連絡するよう電話番号が記載されていた。女性に身に覚えはなかったものの、結局、電話口の男から脅されるなどしたため、指示された関東地方の住所に複数回にわたって現金を送金。計約1億5400万円をだまし取られた。
こうした手口の事件は全国で相次いでおり、国民生活センターによると、2018年度に寄せられた相談は全国で約17万件(前年度比約1・7倍増)に上り増加傾向で、警察も警戒を強めている。はがきの郵送には、「料金後納郵便」が使われるケースが多い。
後納郵便は、切手を貼る手間を省き、大量のはがきを一度に郵送できる一方、郵便窓口で申し込み、本人確認書類などを提出する必要がある。警察もこうした詐欺グループとの接点に注目。ある捜査関係者は「詐欺への利用が疑われる場合、はがきの郵送を一度止めてもらえたら被害を食い止められるのではないか」と期待する。はがきには、差出人に公的機関名が書かれているなどの共通点があり、記載内容を確認すれば、詐欺への利用を見抜ける可能性がある。また、事件後の捜査でも、郵便局からの情報提供があればグループ特定に役立つこともある。
ただ、郵便局側は協力に及び腰だ。「通信の秘密保護」を規定する憲法21条第2項により「郵便法」では、局員が郵便物を許可なく開封・閲覧したり、知り得た情報を漏えいすることを禁止する「信書の秘密」を明記している。開封は、はがきの閲覧も含まれ、違反者には罰則もある。日本郵便の担当者は「後納郵便制度が詐欺に使用されているのなら誠に遺憾。しかし、はがきの内容によって引き受けの可否を判断することは郵便法上難しい」と言葉を濁す。
郵便局員は、プライバシーの保護と犯罪抑止とのはざまで難しい判断をしなければならない。愛知学院大の高橋洋教授(憲法学)は「郵便法の制定時には、はがきが詐欺に使われることは想定外だったのではないか。被害の大きさを考えれば、通信の秘密に配慮しつつ、犯罪への使用が明白なはがきの差し出し時の受け付けや配達を制限できるよう法改正すべきだ」と指摘する。【高井瞳】