横浜市のカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致を巡り、新型コロナウイルス感染拡大への対応を優先し事業をいったん止めるよう求める声が市民から相次いでいる。市は、国による認定スケジュールに変更がないことから、予定通り事業を進めるが、9日にはIRを担当する平原敏英副市長が「我々も大変苦しい中で仕事をしている」と複雑な胸の内を明かした。市ではコロナ禍での準備が批判につながりかねないとの懸念が高まっている。【樋口淳也、中村紬葵】
「市長、カジノ・IR事業の停止と、直ちに指示してください」
9日午前の市役所(中区)2階の市長室に隣接する応接室。平原氏と向き合った市民団体「カジノを考える市民フォーラム」共同代表の斎藤勁(つよし)元官房副長官は、林文子市長あての意見書を切々と読み上げた。
平原氏は「しっかりと受け止めさせていただいた。早速、市長に説明し、意見交換したい」と返答。一方で、IR事業の推進に関して「大前提として、来年の国の申請期間が動かない。我々も大変苦しい中で仕事をしている」と心情を吐露。国の動きを見極めた上で「柔軟に対応できるところは対応したい」と発言した。
市の幹部がこうした発言をする背景には、コロナ禍でも粛々と準備を進めることの批判が、IR誘致そのものへの批判に後々つながりかねないという懸念があるとみられる。
8日には、誘致の是非を問う住民投票を実現しようと直接請求を目指す市民団体が市役所で記者会見し、今月下旬に予定していた署名活動開始の延期を発表した。この際、団体側は市に対して「休戦」を呼びかけた。
呼びかけについて林氏は、同日の定例記者会見で「私自身も理解できる」と語った。ただ、実際の「休戦」については、平原氏と同様に国の動向を注視する考えを示すにとどめ「今のところはスケジュールを変えることはしない」と重ねて強調した。
政府が公表した案では、自治体の計画を2021年1月4日~7月30日に受け付けるとしている。市はそこから逆算し、今年6月にはIRの要件を定める実施方針や事業者の募集要項を公表。事業者選定後、区域整備計画を策定し、市議会の議決を経た上で、21年度初めにも計画を申請することを想定する。
新型コロナの感染が広がるものの、政府関係者は、現時点で期間を延期する考えはないと明言している。そのため市は、緊急事態宣言後の対応に追われる中でも、目玉政策であるIR誘致に向けて「ぎりぎりのスケジュール感」で事業を進めなければいけないという状況が続いている。