安倍首相も小池都知事も「票を持ってこない者は死ね」と言っているのだ/倉山満

―[言論ストロングスタイル]―

◆アキエ・アントワネット

日本国民は本気で覚悟した方がいい。日本政府は国民を殺す気だ!

麻生太郎は、リーマンショックで日本人を地獄に導いた。菅直人は、日本人を恐怖のどん底に叩き落した。安倍晋三は両方だ。ただでさえ消費増税の影響で景気の悪化はリーマンショックを超えている最中に、このコロナ禍である。安倍内閣は無能の限りを尽くしているのだが、それでいて働き者なのだから、なおさら始末に負えない。

この人物、空疎な記者会見を開くたびに「自分は頑張っているのだから感謝しろ」と国民に訴える。「戦い」などと勇ましい言葉遣いを繰り返す。だが、清潔で真面目で我慢強い国民が、政治家や官僚の無能を補ってくれていることへの感謝は述べない。

かつて東條英機という、大日本帝国を滅ぼした愚かな総理大臣がいた。

東條は個人としては超大まじめで、仕事熱心だった。仕事の邪魔をされるのが大嫌いで、特に自分の批判をされるのが何より嫌いだった。だから、邪魔者は、どんな些細なことでも許さず、いかなる手段を使っても排除した。時にこの世から。それでいて、忠誠心が高い側近には手厚く報いた。

別に安倍首相への嫌味ではない。だとしたら東條に失礼だ。東條の妻の勝子も傲慢な態度から蒋介石夫人の宋美齢になぞらえて「東美齢」などと憎まれたが、安倍昭恵夫人と並べられるほどではない。

昭恵夫人の奔放さは日本中が知っている。だが、空気を読めない態度にも限度がある。

2月26日、安倍首相は各種イベントの自粛と全国の小中学校の休校を要請した。よほど直前に決まったのだろう。萩生田光一文科大臣と事務次官も知らなかった。秋葉賢也補佐官に至っては政治資金集めのパーティーを開き、注意を受けている。本来ならば、萩生田・秋葉と言えば安倍側近と目される人だが、その人たちすら外された場で意思決定が行われているのだ。

首相の要請には何の法的根拠もない。だが、従わなければどうなるか。社会の同調圧力がやってくる。以後、椎名林檎もK-1も、活動自粛に追い込まれた。ホリエモンに至っては、脅迫まで舞い込んできたとか。

3月28日、安倍首相はさらなる自粛を求めた。「花見に行くな」とまで言い出した。何の根拠で言っているのか、首相のいつも通りの分かりにくい説明ではやっぱりわからないが、日本人はお人よしで我慢強いので、ほとんどの人は外出を控える。

その直前、首相夫人の安倍昭恵が芸能人を集めて桜を背景に写真を撮っている写真が流出した。

28日の記者会見で、首相は「私の不徳の致すところです」と謝罪から入るのかと思いきや、何事も無かったかのように国民に我慢を求めた。国会でも「レストランに桜があっただけで花見ではない」「写真の日付を確認しろ」と開き直る始末だ。

散々自粛を求めておいて、この言い方である。ちなみに日付は3月23日。花見の自粛は求めていないが、国民に我慢を強いている時期には変わりない。

まさに、アキエ・アントワネット。

マリー・アントワネットの御主人のルイ16世は国民の怒りを買ってギロチン台に送られたが、安倍首相も国民に頼みごとをするなら奥さんに言うことを聞かせてから出ないと、いつまでも日本人が我慢すると思われない方が良い。

◆安倍首相も小池都知事も「自民党に票を持ってこない者は死ね」と言っているのだ

自粛とは、営業停止も含む。当然、収入が入らない人も多い。そうした場合、普通の国では、政府が減収分を補償する。香港のような小さな地域でも1人頭14万円とか。

ところが安倍首相は「国民全員への給付はしない」と断言した。その理由として、「事務上の問題」をあげていた。その矢先に「全家庭にマスクを2枚ずつ配る」と発表した。なんだ、配れるではないか? 小切手はダメなのか?

気がふれた安倍信者以外は呆れただろうが、本質は戦慄すべきだ。

安倍首相は全国民への補償と同時に、消費減税を拒否している。一方で、農業団体の陳情で「和牛券」を検討したかと思うや、漁業団体からの陳情で「魚介券」である。ふざけているのではなく大まじめだ。

なぜか? 自民党に投票しない人間に金など回したくないからだ。そして、「お恵み」として「マスクを2枚」である。安倍自民党は、「緻密で公平な政策を検討している。全国民へのバラマキなどやらない」と公言している。これは暗号で、「自民党に票と金を持ってこない者は死ね」と言っているのだ。

この安倍首相に輪をかけるのが、東京都の小池百合子知事だ。3月30日の記者会見は、まるで殺人予告だ。カラオケボックスや夜の繁華街を名指しで「行くな」「営業自粛しろ」と求めた。一方で、名指しされなかった業界もある。もう、わかるだろう。名指しされた業界は政治献金をしておらず、されなかった団体は日ごろから付け届けをおこたっていなかったのだ。

もちろん、感染の拡大で医療崩壊寸前なのも分かる。ならば、自分が借金をしてでも、民間に補償すべきではないか。東京都は地方債を発行し、政府や日銀から借金してくればいいではないか?

小池知事の要請には法益効力はない。だから補償はなされない。しかし、従わなかったとしても罰則はない。だから感染が止まらない。営業を自粛するまでもなく客など来ない。これではコロナの前に、経済苦で死人が続出しそうだ。結果、誰も幸せになれない状況が続く。

小池都知事は愚かにも、記者会見直前に「ロックダウン」と口走った。だが、東京封鎖など物理的にも法的にもできない。特措法では外出自粛の要請ができるだけだし、感染症法で72時間鉄道を止めることができるが、それだけだ。全面的に止めると、本当に都市機能が麻痺してしまう。また外国では、法に伴う外出禁止令があり、警察のみならず時に軍隊が市民に強制する。これは、日本ではありえない。ましてや、軍刑法を民間人に適用する戒厳など、原理的にあり得ない。なぜなら日本には軍刑法が無いからだ。

日ごろから法を整備していないと何もできない。無理にやろうとすると権力者がお人よしの弱者の権利を侵害し放題になる。

今の権力者は何をしでかすかわからないと、本気で構えるしかない。

【倉山 満】
憲政史研究家 ’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。現在、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を行っている。ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』など著書多数。最新著書に『13歳からの「くにまもり」』

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