新型コロナ感染爆発「第2波」は食い止められるのか? アフリカからの逆流リスクも…

◆米国はWHOへ拠出金停止。経済再開にシフトチェンジ

抑制を続けるべきか? それとも、緩和策に転じるべきか?

4月16日、米国のトランプ大統領が、新型コロナウイルスの感染拡大で停滞する経済活動の再開に向けて動き始めた。これまで全国民に対し、外食や旅行を控えるよう「行動制限」を課していたが、期限を迎える4月30日までに新指針を策定。感染の少ない地域から3段階で外出制限の緩和や店舗の営業再開などを促す方向で調整に入るという。

「いくつかの州では5月1日より前かもしれないし、もっと時間がかかる州もあるだろう」

専門家からは「楽観的すぎる」といった批判の声も上がっている。だが、ドイツのメルケル首相も15日、新規感染者の減少で医療崩壊の可能性が小さくなったことを受け、緩和策に転じる方針を発表した。医師で医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏が話す。

「一見、トランプ大統領のやり方はむちゃな話に映るかもしれません。ただ、ロックダウンを長く続けるのは不可能ですし、様子を見ながら段階的に緩和していく方法は合理性がある。集団免疫を獲得するために、あえて行動制限を緩和させて人々に感染を広げるという方法論が語られるのは、新型コロナに感染した若年層の致死率が0.1%程度と、極めて低いことが理由でしょう。

重篤化して死亡の恐れがある人は隔離し、健常人には意図的に感染させるという手法は、集団免疫を考えたときそれほど突飛な話ではない。実際、現時点で封じ込めに成功している韓国が厳しい行動制限措置を取らなかったのは、こうした考えがあったからという見方もあるほどです。

ロックダウンや行動制限措置を続けるのは、経済を瀕死の状態まで追い詰めるだけでなく、新型コロナ感染のピークを、季節性インフルエンザが流行する冬まで遅らせてしまうリスクも生む……。ピークを越えて新型コロナをコントロール下に置いたら、どこかのタイミングで緩和策に切り換えていくべきなのです」

◆アフリカから感染の「逆流」リスクも

ただ、緩和の動きをいぶかしく見る専門家がいるのも事実だ。4月12日までに、中国の専門家グループのトップでもある鍾南山医師は「ウイルスはすでに変異しており、感染力は非常に強く、致死率もインフルエンザの20倍以上になっている」との認識を示している。16日にはWHO(世界保健機関)が、アフリカ地域の新型ウイルス感染者数が向こう3~6か月で1000万人に膨れ上がる恐れがあると発表。このアフリカの感染爆発が「第2波」となって欧米やアジア諸国に「逆流」するのではないかとも危惧されているからだ。上氏が続ける。

「中国や韓国など、すでにある程度封じ込めに成功したかに見える国もあるが、免疫が備わった人が増えているわけではありません。欧州にしてもコロナ禍をコントロールできているわけではなく、現在、感染爆発を起こしているアフリカから第2波が襲来する可能性は十分ある」

一方、気がかりなのは、14日にトランプ大統領がWHOへの拠出金の停止も表明した点だ。米国の負担額は協力国中最多で、WHOの収入全体の15%に相当する約4億ドル(約430億円)に達するため、「資金引き揚げ」のインパクトは計り知れない。トランプ大統領はかねてよりWHOを「中国寄り」と評しており、1月末に米国が出した中国からの渡航制限措置をWHOがいさめたことについても、「危険で破滅的な判断だった」と一刀両断。「WHOは中国側の主張をすべて額面通りに受け取ってきた」と批判している。

世界が一つになって感染症に立ち向かわかなければならない大事なときに、その「旗振り役」となるWHOの活動資金を断つことが何を意味するのか? WHO西太平洋地域事務局「新興・再興感染症チーム」でパンデミック対策に従事してきたキャリアもある、医師でジャーナリストの村中璃子氏が話す。

「WHOへの拠出金の支払い停止は、米国国内で湧き上がっているトランプ大統領に対する批判をかわす狙いがあると見ていいでしょう。そもそもトランプ大統領は、CDC(米国疾病対策予防センター)が1月早々に新型コロナウイルスの危険性を指摘していたにもかかわらず、これを無視してきた経緯があります。

大統領就任以来、CDCや保健福祉省の予算を削減してきたことで確執が生じていたことも影響している。トランプ大統領は『WHOが中国寄りのため正確な情報を得られず感染拡大を招いた』と主張しているが、それ以前に、彼がCDCの警鐘に耳を貸さなかったことが対策の遅れを招いたと批判にさらされているのです。

◆WHOが機能していない?

ただ、トランプ大統領が言うように、WHOが機能していないというのも間違ってはいない……。

テドロス事務局長と中国の習近平国家主席が、WHOの専門家派遣に合意してから受け入れまでに1か月ほどかかりましたし、その報告も中国当局の対応を絶賛する内容でした。中国側の情報が正確なのかどうか見極め切れないところもあり、実際、中国は今になって武漢の死者数を当初の1.5倍に修正しています」

村中氏が指摘するように、武漢市は17日、公式な死者数を修正。公表していた死者2579人に、新たに1290人を上乗せした。市当局によると、自宅で死亡したケースをカウントしていなかったことや、集計作業の遅れが修正の理由だというが、米国が再三にわたって指摘してきた「過少報告」疑惑を中国自らが認めた格好だ。村中氏が続ける。

「拠出金を増額するなどWHOの枠内でも力を強め、大国となった中国に対し、WHOが意見を言うことが難しくなっている。だが、WHO以外に感染症と闘うための国際プラットフォームはないので、現時点でWHOが弱体化することは避けなければならない。

終身雇用職員の給料や年金、福利厚生が高額で、人件費が予算を圧迫していると以前から問題視されていますし、日本のお役所のようにコスト意識が希薄なうえ、決定に時間がかかる非効率な組織なので、WHOの改革は不可欠とも言える。

パンデミックの収束には、新型コロナウイルスに関する情報共有と、ワクチンや治療薬の開発が不可欠で、本来ならWHOはそのまとめ役となるべきだが、中国からの情報は相変わらず当局発表のみ。ワクチンや治療薬の開発も結局は市場の競争原理に任せたままで、役割を果たしているとはとても言えません」

「第2波」の襲来を間近に控え、WHOはコロナ終息に向けて態勢を整えられるのか……。日本も何ができるのか? 考えるべきときだろう。

◆減収世帯に30万円給付から一律10万円給付へ

「ここに至ったプロセスにおいて混乱を招いたことは私自身の責任であり、国民の皆さまに心からお詫びを申し上げたい」

4月17日、安倍晋三首相は緊急事態宣言の対象を全国に広げることを決めて臨んだ会見で、国民に対しこんな殊勝な言葉を口にした。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は2020年度補正予算案を組み替えて国民1人当たり一律10万円の現金給付を決めた。当初、減収世帯を対象に30万円を給付する方針を掲げていたが、同じ連立政権を組む公明党からの激しい突き上げを受け翻意させられた格好だ。政府は5月中の支給を目指しているが、手続きの詳細は未定。現在、緊急事態宣言の期間に指定されている5月6日以降の道筋はまったく描けていない……。

<取材・文/週刊SPA!編集部 写真/AFP=時事 時事通信社>
※週刊SPA!4月21日発売号より