突然コロナ専門病院に 転院手配や妊婦らの対応に奔走 大阪・十三市民病院

新型コロナウイルスで、東京都に次ぐ多くの感染者が確認されている大阪府。大阪市立十三市民病院(同市淀川区)が、新型コロナの中等症患者専門の「重点医療機関」に衣替えする。機能を特化し、医療機関にとって負担の大きい感染症対策を集約化するのが狙い。十三市民病院では突然の決定に戸惑いつつ、現在の患者の受け入れ先探しなどに奔走している。5月上旬を目標に転院を完了させ、できるだけ早くスタートさせたい意向だ。一方、利用者の間には「これからどうなるのか」と不安が広がる。
十三市民病院は大阪市北部にある中規模総合病院。263床のうち39床が結核患者用だ。高齢者医療や乳幼児育児の支援にも特色がある。
発端は大阪市内で14日に開かれた、新型コロナウイルスのワクチンなどの開発推進を目指す会合。大阪府・市や府内の国公立大、府・市立病院運営法人のトップらが一堂に会し、連携協定を結んだ。松井一郎・大阪市長によると、会合で医療の専門家から「重症患者向けの準備は進んでいるが、問題は中等症への対応だ」との意見が出た。その後、松井市長から十三市民病院を運営する市民病院機構の理事長に、十三市民病院を受け皿とするよう指示を出したという。トップダウンの方針決定に、松井市長は記者団に「僕が決断した。スピード感を持って進めていく」と語った。
「電話での問い合わせが殺到して、電話がつながらない状態になっている」。十三市民病院の担当者はこう話す。公立病院の役割上、いつかは中等症患者の受け入れがあり得ると想定していたが、専門病院となることについては「急な話だった」。要員については、医師は他の病院から派遣してもらい、看護師は基本的に十三市民病院のスタッフで確保する考えだ。外来の初診は16日から休止し、20日には手術もやめた。24日で再診も終える。
大変なのが入院患者の転院だ。市長の方針表明から3日後の17日午後3時時点で、入院患者は約130人(うち約20人が新型コロナ患者)。転院先は、これまで患者の紹介などで関係のある病院など、つてを頼って探しているが、22日午前の時点でまだ100人(うち17人が新型コロナ患者)が入院している。
十三市民病院は「母乳による育児」の指導に定評があり、月40人程度が出産しているという。「そうしたうちの特色を目当てに来てもらった人には、申し訳ない」と担当者。21日を最後に出産も終了し、その後に陣痛が来た妊婦は近隣の病院か本人が希望する病院での出産に向けてフォローしている。
急ピッチで進む「コロナ専門病院化」だが、利用者からは戸惑いの声が聞かれる。出産を5月中旬に控えた大阪市淀川区の主婦(19)は「ニュースで知って電話をかけたがつながらず、ちょうど今日が2週間ごとの検診だったので相談に来た。出産する病院がどうなるのか分からず、今から見つかるのか、見つかっても費用がかなり変わってくるのではないかと不安だ」と話していた。【宮川佐知子、矢追健介、伊藤遥】