新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、地域やインターネット上では、デマや中傷が横行している。3月末に住民男性の感染が確認された岡山県里庄町では、スーパーの店主が、感染していないのに「感染者だ」とするデマの被害に遭った。1か月近くたっても客足が十分戻っていないといい、取材に応じた店主の妻は、「一度広がったデマを打ち消すことがこんなに難しいとは」と胸中を語った。(上万俊弥)
里庄町里見のスーパーを夫(68)と2人で営む女性(65)。生鮮食品などの必需品を取り扱っている。
女性が異変を感じたのは3月28日。前日に県が、里庄町在住で、フィリピンから帰国した50歳代自営業男性が新型コロナウイルスに感染したと発表していた。県内ではまだ2例目の感染確認だった。
女性がいつもより来客が少なく不思議に思っていると常連客から「ご主人、感染したと聞いたよ。大丈夫?」と小声で話しかけられた。
想像もしていない言葉に耳を疑った。女性の夫は60歳代のうえ、パスポートも持っていない。常連客には笑って否定した。
「事実じゃないからすぐに収まるだろう。意外と若く見られているのね」。そう軽くとらえていた。
ところが日を追うごとに客は減り続けた。店内にはり紙をしてデマを打ち消そうとしたが、拡散は止まらない。地元商工会も4月3日からホームページに店名をあげたうえで、風評被害の防止を呼びかけた。
それでも、「店の従業員がフィリピンに同行していた」「店内を消毒していた」といった根も葉もないうわさも耳に届き、1週間ほどで売り上げは4割減少した。
現在は徐々に客足が戻りつつあるも、「元通りにはほど遠い。あと何か月かかるのだろうか」と女性。「うわさが確かな情報か一歩立ち止まって考えてほしい」と話している。
◆里庄町=人口は1万1166人(3月末時点)。面積は約12平方キロ・メートルで、岡山県内の自治体で2番目に小さい。