劇場型政治の小池百合子都知事は「機を見るに敏で達者」

新型コロナ対策で目立つ小百合子池都知事のパフォーマンス。自民党都連最高顧問の深谷隆司氏(84)はこれをどのように見ているのか。
* * * 国民が大きな不安に陥っているなか、最も必要なことは首相が先頭に立って敏速な対応を打ち出すことだ。
小池百合子・東京都知事は五輪開催の可能性のあるうちは東京のイメージ低下を恐れて新型ウイルスにほとんど指示を出さなかったが、延期が決まるや制度上不可能な『都市のロックダウン』を喧伝した。早く緊急事態宣言を出すよう何度も官邸に要求、そのたびに記者会見を開いた。政府を抵抗勢力に見立てて世論に訴える、まさに「劇場型政治」でヒロイン役を演じた。政府より対応が早いという印象を与えるのに成功した。
そのやり方は機を見るに敏で、今回も達者というほかない。その言行はあくまで国と比べて、ということに終始しているが。
政府は感染防止だけでなく、経済活動や国民の生活を維持することを考えなければいけない。それに対して都知事は都民の命を守る感染対策に集中して取り組む役割で、やるべきことがはっきりしている。その分、わかりやすい主張ができる。
しかし、経緯を振り返ると、東京の対応は必ずしも素早かったわけではない。感染拡大は3月20~22日の3連休が転換点だったと言われる。このとき小池都知事は外出自粛など何も訴えていなかった。
いま、東京都は他の自治体に比べて財政力があるから、休業協力金など積極的な対策を打ち出しているが、中でも小池氏が一番力を入れているのはあのテレビCMでしょう。まだまだやるべきことはあるのだから、自分のアピールより必要な対策に邁進していただきたい。
7月には都知事選がある。自民党都連は小池支持と報じられているが、それは違う。都連の会議で小池支持を決めたわけではない。ただ、都連は候補者探しをしていたが、未曾有のコロナ危機でそんなことをしている場合ではないという認識から、対立候補の選定作業をストップした段階。小池都知事が自民党都連に歩み寄ってともに対策にあたるか否か。
今、東京は決して生易しい状態ではない。そして人が集まることを否定した新型コロナは世界から消費を奪い取った。命を守ることと経済を安定させること、これから政治に求められる課題は大きい。
【プロフィール】ふかや・たかし/1935年生まれ。1972年国政選挙に初当選。自民党都連最高顧問。郵政大臣、自治大臣、通産大臣などを歴任。
※週刊ポスト2020年5月8・15日号