新型コロナウイルスの封じ込めのため、休業指示に応じない事業者に対する罰則を求める声が広がっているようだ。 たとえば、4月29日にあった全国知事会のウェブ会議では、富山県知事らが「罰則を伴った法改正が必要」などと発言。多くの知事が同調したという。 休業要請・指示の根拠となっている「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」では、応じなかった企業名の公表はできるが、罰則の規定がない。 罰則規定をめぐっては、西村康稔・新型コロナ対策担当大臣も、法改正を示唆する発言を繰り返している。 企業にもさまざまな事情がある。緊急事態とはいえ、簡単に私権を制限することはできるのだろうか。早田由布子弁護士に聞いた。 ●なぜ「罰則」が望まれるのか 新型インフルエンザ特措法では、多数の人が集まる遊技場等に対し、都道府県知事は、使用の制限・停止等を要請することができます(法45条2項)。 措置法45条2項 特定都道府県知事は、(…)当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。 そして、事業者が正当な理由なくこの要請に応じないときで、特に必要のあるときは、使用の制限・停止等を指示することができます(同法45条3項)。 措置法45条3項 施設管理者等が正当な理由がないのに(…)要請に応じないときは、特定都道府県知事は、(…)当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる。 5月1日、兵庫県知事が休業の要請に応じなかったパチンコ店に対し、全国で初めて休業を「指示」したことが報道されました。同日、神奈川県もパチンコ店に休業指示を出しています。 これは、事業者が従う必要のない「要請」ではなく、休業する法律上の義務を負ったことを意味します。 現行法では、その義務に反したからといって、罰則等があるわけではありません。実際、休業指示が出てからも営業しているパチンコ屋があるようです。 そのため、より強制力を持たせるよう、罰則を設けることが言われているのです。 ●「営業の自由」との衝突 営業を継続してきたパチンコ店等の事業者に対し休業を指示するというのは、どういうことでしょうか。 店舗を維持するためには多額の経費がかかります。毎月の家賃、従業員に対する休業補償や社会保険料。休業して入ってくるものがなくても出ていくばかり。 一方、休業を指示したとしても、その損失を補償すべきとする条文はありません。要は、事業者が一方的に損失を負うだけなのです。
新型コロナウイルスの封じ込めのため、休業指示に応じない事業者に対する罰則を求める声が広がっているようだ。
たとえば、4月29日にあった全国知事会のウェブ会議では、富山県知事らが「罰則を伴った法改正が必要」などと発言。多くの知事が同調したという。
休業要請・指示の根拠となっている「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」では、応じなかった企業名の公表はできるが、罰則の規定がない。
罰則規定をめぐっては、西村康稔・新型コロナ対策担当大臣も、法改正を示唆する発言を繰り返している。
企業にもさまざまな事情がある。緊急事態とはいえ、簡単に私権を制限することはできるのだろうか。早田由布子弁護士に聞いた。
新型インフルエンザ特措法では、多数の人が集まる遊技場等に対し、都道府県知事は、使用の制限・停止等を要請することができます(法45条2項)。
措置法45条2項 特定都道府県知事は、(…)当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。
そして、事業者が正当な理由なくこの要請に応じないときで、特に必要のあるときは、使用の制限・停止等を指示することができます(同法45条3項)。
措置法45条3項 施設管理者等が正当な理由がないのに(…)要請に応じないときは、特定都道府県知事は、(…)当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる。
5月1日、兵庫県知事が休業の要請に応じなかったパチンコ店に対し、全国で初めて休業を「指示」したことが報道されました。同日、神奈川県もパチンコ店に休業指示を出しています。
これは、事業者が従う必要のない「要請」ではなく、休業する法律上の義務を負ったことを意味します。
現行法では、その義務に反したからといって、罰則等があるわけではありません。実際、休業指示が出てからも営業しているパチンコ屋があるようです。
そのため、より強制力を持たせるよう、罰則を設けることが言われているのです。
営業を継続してきたパチンコ店等の事業者に対し休業を指示するというのは、どういうことでしょうか。
店舗を維持するためには多額の経費がかかります。毎月の家賃、従業員に対する休業補償や社会保険料。休業して入ってくるものがなくても出ていくばかり。
一方、休業を指示したとしても、その損失を補償すべきとする条文はありません。要は、事業者が一方的に損失を負うだけなのです。