最大の武器を失い苦境に れいわ新選組と山本太郎の今を読む【寄稿 畠山理仁】

「翼をもがれた鳥が、逆風と追い風の中にいる」

れいわ新選組と山本太郎代表の現状を言い表せばこうなるだろう。

最大の逆風は、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために余儀なくされた街頭集会の中止だ。一方の追い風は、永田町の一部で「消費税ゼロ」の声が与野党問わずに上がり始めたことである。

危機下において、少数政党や弱者の声は見過ごされがちだ。そのため世間からは「れいわと山本は何をしているのか」との声も聞こえてくる。確かにニュースにはなっていない。しかし、れいわは参院選の直後から、着実に次期総選挙への準備を進めてきた。

「野党共闘の条件は消費税5%。これが実現できなければ、我々は全国に100人以上の候補を立てて独自で戦う」

この山本の訴えに呼応して候補者公募に応じた人は800人を超えた。

昨年は北海道、九州、沖縄、東北、北信越、東海、近畿、関東で全国ツアーを行った。今年に入ると中国・四国、滋賀県、岐阜県を回り、どの会場でも数百人単位で聴衆を集めてきた。

2月上旬には、第1次公認候補予定者13人を発表した。野党共闘か独自路線かの結論はまだ出していないが、どちらでも対応できる準備を着々と進めている。

そこに新型コロナウイルスの逆風が吹き、街頭での活動が止まった。それでも候補者擁立に向けた動きは水面下で進行している。コロナに対する緊急提言も行っている。ただ単にニュースとして報じられないだけだ。

考えてもみてほしい。昨年4月の結党から同7月の参議院議員選挙まで、れいわの動向は新聞・テレビなどの大手メディアから黙殺されてきた。

主要な発信源はインターネットしかなかった。山本自身が「放送禁止物体」と自嘲気味に語っていた通り、取り上げるメディアは雑誌やネット媒体に限られた。それでもSNSを活用して有権者との接触機会をつくり出し、多くの人々を街頭集会に向かわせた。

遠くからでもよく聞こえる音響施設。会場に設置したモニターにグラフやデータを表示させ、スライド形式でわかりやすく見せる手法。時にユーモアを交えながら語る山本の言葉は、多くの有権者に「熱」を伝えた。

集会の終了後には、列が途切れるまで一人一人と握手を交わし、ツーショットでの撮影会を行った。誰からの質問にも丁寧に答えた。街頭で濃厚接触した有権者がSNSで「熱」を拡散し、別の有権者を集会に呼び込んだ。結党から3カ月で4億円の寄付を集めた爆発力は今も色あせない。

れいわの躍進は、インターネットを抜きには語れない。しかし、最大の強みは有権者との「濃厚接触」だ。それだけに、最大の武器を失った今は苦境に立たされている。

れいわは現在、インターネット上で「おしゃべり会」を開催している。しかし、街頭ツアーほどの勢いはない。山本が「大きな痛手」と語るように、オンラインでは熱が伝わらず、寄付も伸び悩む。

それでも山本は、インタビューの最後に笑ってこう言うのだ。

「なんか面白いこと、やりたいですねぇ!」

山本が街に出られるのは、「コロナ戦争後」の世界である。翼をもがれた鳥が空に舞い上がるためには「乱気流」が必要だ。=文中敬称略

(文・畠山理仁/フリーランスライター)