がん拠点病院で相次ぐ診療縮小の動き コロナ感染拡大が圧迫 毎日新聞アンケート

新型コロナウイルス感染者が全国最多の東京都内の「がん診療連携拠点病院」などを対象に毎日新聞が実施したアンケートで、回答した病院の7割が手術件数を減らすなど、多くががんの診療を制限していると回答した。感染予防をしながら新型コロナ患者を診察する負担や、院内感染への警戒が背景にある。がんの発見や手術の遅れを懸念する声もあり、新型コロナの感染拡大ががん診療を圧迫する状況が浮かび上がった。
アンケートは4月27~30日、質の高いがん治療を提供する東京都内の「がん診療連携拠点病院」(28病院)▽国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)――の計29病院を対象に実施。17病院から回答を得た。
外来▽入院▽検査▽手術▽抗がん剤を投与する化学療法▽放射線治療――の6項目の状況について尋ねた。最も影響が出ているのは手術で、13病院が実施件数を制限していた。抗がん剤を使う化学療法と放射線治療はそれぞれ7病院が制限していた。外来は11病院、検査も10病院が縮小していた。休診している病院はなかった。
制限した理由について尋ねると、5病院が「新型コロナの診療が負担でスタッフなどに余裕がない」と回答。「患者の感染・重症化リスクを考慮」が4病院、「院内感染の予防」が3病院だった。「コロナ診療へシフトするため不急の手術は延期」「院内感染の発生」と答えた病院もあった。
通常診療への復帰に向けては、全入院患者への新型コロナ感染検査など院内感染対策の徹底を挙げる病院が多かった。一方、「新型コロナが収まらないと通常の診療には戻らない」との回答もあった。
治療への影響を巡っては、進行の早いがんなど緊急性の高い治療は延期していないため「問題はない」という病院が多数を占めた。一方、「発見が遅れたり、高度な診療が必要な場合に予後が悪化したりする可能性がある」「転院で治療に時間がかかる可能性があり、望ましくない」と懸念する意見もあった。
日本臨床腫瘍学会理事長の石岡千加史・東北大教授は「一部の病院だけでなく、地域全体でがん患者の治療が遅れていて極めてゆゆしき事態だ。患者の生命予後に関わる」と指摘する。【原田啓之、熊谷豪】
がん診療連携拠点病院
専門的ながん治療や地域の医療機関との連携などを行う拠点として、厚生労働相が指定する医療機関。全国どこでも質の高いがん治療を受けられるようにすることを目的に創設された。各都道府県に原則1カ所指定される都道府県拠点病院や、複数の市町村を単位とする2次医療圏ごとの地域拠点病院などがある。