「突然、義母から電話がきて『コロナが流行(はや)ってるけど、うちの息子、体調が悪いみたいね。携帯電話の番号も変えたんだって?』と言われました。夫は元気で、番号も変えていないと伝えると、『あら、あなたには言えないのかしら』と。後日、夫は義母に電話をしていないことがわかり、『お義母(かあ)さん、それが“アポ電”なんですよ!』って注意しました」(40代主婦)
いま、新型コロナの拡大に便乗した不審電話が全国で相次いでいる。
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(「週刊文春」2020年4月2号より全文公開。記事中の年齢、日付、肩書などは掲載時のまま)
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詐欺の手法を考える“シナリオライター”まで
国民生活センターによれば、コロナ関連の相談は今年1月から増加傾向にあり、1月には141件だった相談件数が、2月になると2013件に急増。3月22日までに、5903件もの相談が寄せられたというのだ。
中には、「新型コロナ流行拡大の影響で金の相場が上がるので、金を買う権利を申し込むように言われた」などの事例もあった。
特殊詐欺に詳しい暴力団関係者は、こう明かす。
「最近では巧妙に練られた詐欺の手法を考える“シナリオライター”までいる。彼らは日々、ニュースをチェックしながら詐欺マニュアルを作り、それをCDなどに焼いて詐欺グループに売りつけるのです」
そうして考え出された新手の詐欺は、コロナにかこつけて、高齢者や一般家庭にまで忍び寄っているのだ。
社会部デスクが話す。
「既に各地で、『水道管にウイルスがいるので洗浄します』といった詐欺話が出始めています。埼玉県では、市役所の職員を名乗る人物から電話で、『ウイルス除去の機械を取り付ける』と言われ、水道工事代を要求された例もありました」
感染状況の調査として家族状況や個人情報を聞き出す
詐欺や悪質商法に詳しいジャーナリストの多田文明氏が解説する。
「保健所を名乗る人物から電話がきて、『手洗いやうがいをしてください』などと丁寧な説明をされ、感染状況の調査をしているかのように家族状況や個人情報を聞き出す手口もあります」
電話に出ると自動音声で『コロナウイルスにかからない自信はありますか?』などと質問され、プッシュボタンで回答を求められるというケースもある。
「質問に答えて行くと、最後はサプリなどの商品を買わされたり、個人情報を盗(と)られて詐欺に遭う危険があります。質問に答えた人は真面目でいい人と見られ、翌日、改めて相手から電話がくることも」(同前)
犯罪者にとって電話や訪問がし易い状態
また最近は“点検窃盗”も増えているようだ。
「例えば電力会社を装った二人組が自宅に来て、対応している隙に一人が金品を盗むという手口です。こうした背景には、コロナの影響で、一般家庭の在宅率が高くなっていることが挙げられます。犯罪者にとって電話や訪問がし易い状態になっているのです」(同前)
マスク不足に付け込み、「マスクを売ります」などと記されたメールが突然届くケースも増えている。
「そこに書かれたリンクを不用意にクリックすると、個人情報が盗まれる危険があります。メールだけではなく、市の職員を装った人物が自宅に来て『10万円を払えばコロナウイルスが終息するまで、毎月マスクを配布する』などと持ち掛けられたケースもある」(前出・社会部デスク)
さらに長崎や東京では、厚労省や池袋労働局の職員を名乗る男から、「コロナ対策で助成金が出る」という電話がかかってきた事例も発生。キャッシュカードの番号を聞かれたり、銀行口座の登録が必要として銀行のATMに行くように指示されたりしている。
相手の身元を自分で確認することが大事
こうした巧妙な手口への対抗策はあるのだろうか。
「法律や制度が変われば、それに便乗する詐欺が出てきます。今後はコロナ関連の給付が本格的に始まるため、それを狙った詐欺が増える可能性がある。詐欺師はあらゆる職業に成りすまし、最近では日本WHO協会の職員を名乗る例もあるほど。ですから、相手の名前や担当部署を聞いた上で、一回電話を切って確認をすることを勧めます。直接訪問された場合には、『もう一度来てもらえますか』と言って、相手の身元を自分で確認することが大事です」(前出・多田氏)
詐欺師というウイルスは、今も水面下で増殖中である。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年4月2日号)