日本教育学会は11日、新型コロナウイルスによる休校の長期化を受けて政府が検討している学校の「9月入学」について、「時間をかけた丁寧な社会的議論が必要」として、拙速な導入決定をしないよう求める声明を発表した。
同学会は教育学に関わる研究領域を対象とする学会では国内最大規模。声明は、長引く休校による勉強の遅れや受験への不安などに対し「真摯(しんし)に耳を傾けることが求められる」とする一方、その解決策として9月入学を導入することについては「状況をさらに混乱させ、悪化させかねない」と指摘した。具体的な問題として、義務教育開始が最も遅い児童で7歳5カ月と世界でも異例の高年齢となる▽4~8月の学費の空白が私立大だけで1兆円近くになる――などを例示した。
学会の会長を務める広田照幸・日本大教授は文部科学省で記者会見し、9月入学を推す一部の知事らの動きについて、「メリットだけに注目して議論している。財政的、制度的にどれだけきしみを生むのかについてご存じないのだと思う」と批判。9月入学に伴って義務教育の開始年齢が引き上げられるリスクに関しては、「就学前教育の経済的効果が高いという知見が出てきていて、諸外国で就学年齢を早めようという動きがある中で逆行した議論をしている」と述べた。
学会は現在、特別委員会を設置して9月入学に関連した課題の洗い出し作業を進めており、22日に政府への緊急提言を発表する方針。政府は6月上旬までに論点や課題を整理し、導入の可否を判断する見通しだ。【大久保昂】