新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞を受け、地球温暖化を引き起こす二酸化炭素(CO2)の排出量が大幅に減るという予測が相次いでいる。一方、感染収束後に反動で排出量が増える懸念もあり、環境省が対策に乗り出している。
国際エネルギー機関(IEA)は、2020年の世界のCO2排出量が前年比で8%減少するという推計を、4月末に発表した。リーマン・ショックの影響を受けた09年(前年比1%減)以来11年ぶりの大幅減となる可能性が高い。フィンランドの研究機関は、公開されている発電データなどを基に、中国の2月初旬から約1か月間のCO2排出量が、前年同期比で25%減になると推定した。
途上国などで化石燃料の使用は増えており、地球全体のCO2濃度は増加傾向が続いてきた。日本の人工衛星「いぶき」のデータによると、今年3月のCO2濃度は昨年12月に比べて0・5ppm増えたが、過去5年間の同時期の上昇幅(1・1ppm)の約半分だった。国立環境研究所は「(CO2濃度には気象条件なども影響するため)新型コロナウイルスの影響がどこまでか、見極める必要がある」とする。
リーマン・ショック直後に減少した世界のCO2排出量は、その後の経済回復に伴い大幅に増えた。新型コロナウイルスの感染収束後も同様の反動が予想され、小泉環境相は「経済発展と脱炭素化の両立を目指し、今から政策を準備する必要がある」と指摘。環境省などは4月末に成立した20年度補正予算に、海外の生産拠点を国内に移す企業に太陽光発電設備の設置を補助する事業費50億円を盛り込むなど、対策を進める。
東京大の高村ゆかり教授(環境法)は「現状で新型コロナウイルス対策に集中するのは仕方ないが、その中でも国民に環境対策への意識も持ってもらえるよう国や専門家が呼びかけていく必要がある」と指摘する。