緊急事態宣言の延長を受けて、外出自粛要請の解除や施設の再開などを判断するための独自基準を決定した大阪府。コロナ危機が起きて以来、府のトップ、吉村洋文知事のリーダーシップに注目が集まっているが、知事の決断を背後で支えている人物がいる。大阪市の松井一郎市長(56)だ。
その松井氏が「文藝春秋」6月号のインタビューに応じ、「大阪モデル」が機能している理由などについて明かした。
30年間使われていなかった直通電話
「大阪の場合、府と市で役割が重なる『二重行政』の問題が残っていますが、昨年4月のクロス選で僕が知事から市長に、吉村さんが市長から知事になりました。迅速な対応ができているのは、お互いがやらなければいけないことを、理解していることも大きいと思います」
2人は日ごろから携帯電話でも緊密に連携を取っているが、いざという時の「連絡手段」はそれだけではないという。
「実は知事室と市長室にはホットラインがあるんです。橋下さんが市長に、僕が知事に就任した2011年に“発見”したのですが、事務方もその存在を全く知らなかった。市長室は受話器を上げるだけで知事室に、知事室はボタンを押すだけで市長室に繋がります」
このシステムができたのは、岸昌知事、大島靖市長時代の1979年のこと。
「それまで府と市は対立していたのですが、岸知事と大島市長が『今後は協力しよう』と直通電話を設置したそうです。当時は在阪メディアも大きく取り上げたものの、結局、以降はほとんど使われずに30年の年月が経過していた。それを僕らが復活させたわけです。今ではなくてはならないものになっていますね」
「永田町や霞が関には任せられないから」
この「ホットライン」などを通じ、兵庫県への往来自粛要請をはじめ、様々な対策が相次いで決まっているという。往来自粛要請を巡っては、吉村氏が「文藝春秋」5月号で「松井市長から『吉村、(厚労省の非公開資料に記された両府県の患者数が大幅に増えるという予測値を)見たか?』と電話がかかってきた」と述べていたが、一連のコロナ対応では政治経験豊富な松井氏が影で引っ張っている面もあるのだ。
「永田町の国会議員や霞が関の官僚には任せられないから、首長が政治決断していかなくてはならない場面が増えています。僕自身、大阪市のトップとして、吉村知事とは常に『3カ月先を想像してやろう』と言っているんです。未曽有の危機ですから、スピード感を持って決断すること。それが何より大事です」
永田町や霞が関には任せられない――松井氏は安倍政権のコロナ対策にも強い不満を抱いている。一体どこが問題で、どういう対策を打つべきなのか。その答えは「文藝春秋」6月号ならびに「文藝春秋digital」に掲載した松井氏のインタビュー「 安倍総理、減税せんと国民は飢える 」に記されている。
そのほか、吉村知事との緊密な連携ぶりに加え、安倍政権批判に終始する野党への憤り、責任逃れを図る厚労省のやり方、菅義偉官房長官に直訴した大阪の現実、休業要請に応じないパチンコ店の店名公表の問題点などについても、8ページにわたって語っている。
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(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2020年6月号)