甲府市里吉のビュッフェレストランが4月、惜しまれながら閉店した。新型コロナウイルスの感染拡大で3月下旬から自主休業していたが、再開の見通しが立たない中、苦渋の決断を下した。店長を務めた古屋賢一さん(39)は「日を追うごとに客が減っていった。本当に悔しい」と話している。【金子昇太】
レストランは「旬菜厨房 奈のは 実りの郷」。和洋食の料理約70種類をそろえるビュッフェ形式のレストランで、県産野菜などを使った豊富なサラダメニューが目玉だった。オープン時に千葉市の会社から指導を受けた関係で同社が運営していた「旬菜厨房 奈のは」の店名を使ってきたが、古屋さんの父守正さん(67)が経営する独自店舗で古屋さんは2009年の開店から店長を務めてきた。
客が減り始めたのは2月末。3月に厚生労働省が1人の感染者が複数人に感染させた事例として「ビュッフェスタイルの会食」を示したことで、さらに客足は遠のいた。例年卒業シーズンの3月は近くの大学の学生らでにぎわい、多い年は1日平均300人以上が来店したが、古屋さんの目算で8割程度減少したという。それでも店内の消毒を徹底し、食材が無駄にならないよう販売する弁当の種類を増やした。しかし、客足は戻らず3月23日に自主休業に入った。
当初、4月11日の営業再開を目指したが、7都府県に緊急事態宣言が発令されたことで見通しが立たなくなり、地代や人件費などの固定費も重くのしかかった。さらに再開できても「感染リスクが高い」と指摘されたビュッフェレストランに客が戻ってくると思えず、4月中旬に閉店を決めた。約30人のパートとアルバイトは解雇せざるを得なかった。
4月17日に店のホームページとインスタグラムに閉店の案内を掲載すると、常連客らから「終息したら家族で食べに行こうと目標にしていただけに残念」「体に優しく、おいしい料理や心温まる接客で大好きなお店だった」などと閉店を惜しむ声が寄せられた。
古屋さんは「お店が愛されていたんだと感じた。たくさんの人に支えられて今がある。感謝しかない」と語った。古屋さんは現在、守正さんが経営する別の店で「奈のは」の料理をアレンジした弁当を企画し、販売している。