緊急事態宣言「39県」で解除へ 懸念される「コロナ第2波」への迎撃戦略は… 識者「一時的な感染者増を恐れるな」

政府は14日、新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言について、「特定警戒都道府県」のうち茨城、石川、岐阜、愛知、福岡の5県と、特定警戒以外の34県を解除する方針だ。宣言を継続する東京や大阪ではすでに自粛の緩みが目立つが、中国や韓国、ドイツでは制限緩和後に再流行が発生している。「第2波」襲来にどう備えるのか。京大大学院医学研究科非常勤講師で医師の村中璃子氏に聞いた。

北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫の8都道府県は宣言を継続。解除の可否を31日の期限までに改めて検討する。
政府の専門家会議は宣言解除の目安として「過去1週間での新規感染者数が人口10万人当たり0・5人未満とする」などの項目を検討している。東京に当てはめると、1週間の新規感染者数は70人未満、1日では10人未満となる。
コロナ対策は経済活動自粛や「ステイホーム」から次の段階に進む。村中氏はこれから取り組むべきことについて「引き続き、手洗いやマスクなどの予防策は必要だが、工場では作業中の距離やシフトの取り方、飲食店では家族以外は対面に座らせないなど業種別のガイドラインの設置も急がれる。ウイルスの生存要件が弱まる夏場のうちに人事異動を済ませる、再流行に備えてオンライン教育や少人数授業のスケジュールを整備するなど、生活を戻すにあたっての議論も求められる」と指摘する。
西村康稔経済再生担当相は、宣言解除後も特定警戒都道府県との往来自粛を国民に求めることを政府の基本的対処方針に明記する考えを示した。
ただ、JR東日本管内の主要18駅のゴールデンウイーク明けの利用データでは、連休前より増加傾向が目立ち、外出自粛に緩みが出た可能性がある。東京の山手線の利用者が大型連休後に約1~2割増えたという。
懸念されるのは制限緩和後の「第2波」や「再流行」だ。中国・武漢市で集団感染が再び起きたほか、韓国では首都ソウルで100人を超すクラスター(感染者集団)が発生。ドイツでは1人から平均何人に感染させるかの指標である実行再生産数が、目安の「1」を再び上回るなど増加傾向にある。
行動を制限すれば感染は収まるが、緩めたとたんに再拡大するという事態が繰り返すしかないのか。
村中氏は「集団免疫を形成するために、一定の流行も必要になる」との見解を示す。そのうえで、「感染者数が一時的に増えることを恐れてはいけない。クラスターが見えていれば対処できる。工夫したのにクラスターが発生したら、再発を防ぐようさらなる工夫をすればいい。再流行の際には、都道府県単位でなく、市区町村単位で、東京23区なども区単位が難しければ東西南北などの『ブロッキング』で制限をかけるなど、経済や教育への影響を最小限にとどめるべきだ」と提言する。
政府は解除後に感染者が再び増えるケースに備え、宣言対象に再指定する目安も検討しているが、村中氏は長期戦に備えて法的な整備も必要だと説く。
「秋になれば、例年1万人規模の死者を出すインフルエンザも流行を始める。新型コロナの重症者とともにICU(集中治療室)が急激に埋まり、医療崩壊しかねない事態にもなれば、再緊急事態宣言の議論にもなりかねない。流行をコントロールしやすい夏の間にできるかぎりの試行錯誤をして『やっていいこと』と『やってはいけないこと』をより具体的に理解しておくことが必要だ。また、コロナ特措法以上に強い制限を可能とする法律の整備も議論しておくべきだろう」
目先の数字だけに振り回されない取り組みが必要だ。