安倍首相「宣言解除」へ前のめり…国民をミスリードする危うさ

東京・大阪などの特定警戒8都道府県を除く、39の県で緊急事態宣言が解除された。14日、安倍首相が記者会見。日刊ゲンダイ記者も参加したが、安倍首相の宣言解除に前のめりな姿勢は、国民をミスリードしかねない。

■7回目の会見もプロンプター頼み

コロナ対応の首相会見は14日で7回目。変わらずプロンプターを使い、冒頭の22分間、原稿を読むことに終始した。あらかじめ通告されている幹事社の質問でも原稿を見ながら回答。自分の言葉で国民に語りかけるドイツのメルケル首相や台湾の蔡英文総統らが評価を高める中、日本の首相に同じ次元を求めるのは無理な相談なのか。安倍の言葉は国民の心に響いただろうか。

■8都道府県「21日をメドに評価」

危ういメッセージもあった。解除対象外となった8都道府県について「1週間後の21日をメドに専門家の皆さんに解除基準に照らして評価いただき、可能であれば、(予定期限の)31日を待つことなく解除する考えです」と明言。感染が続く8都道府県は慎重な検討が必要なのに、首相がメドを口にすれば、一気に「緩む」だろう。安倍首相は、どこかサッパリした表情。苦難のコロナ対応から、まもなく解放されるかのような安堵にも見えた。

さらに、「重症者は減少している」「医療提供体制は少しずつ改善している」と胸を張ったが、前日の13日、28歳で死去した大相撲の勝武士のことは眼中にないのだろうか。糖尿病でコロナに感染するとリスクが高いのに、保健所には電話がつながらず、複数の医療機関をたらい回しされ、PCR検査も遅れた。不十分な医療体制による悲劇だった。

また、バー、ナイトクラブ、カラオケ、ライブハウスを名指しして、解除後も引き続き、国民に利用を控えるよう呼びかけたが、休業補償には言及せず。首相に「行くな」と言われるバーの経営者がどんな気持ちで会見を見たことか。

立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)が言う。

「安倍会見は宣言解除ありきの姿勢がありありでした。国民も長引く自粛生活にうんざりしているので、緩和は歓迎すると踏んでいるのでしょう。しかし、感染者数や医療体制の改善も怪しい。冷静な見極めが必要なのに、安倍首相の前のめりは危険です」

日刊ゲンダイ記者は、勝武士の死去について質問しようと、繰り返し挙手したが、当ててもらえなかった。