新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が39県で解除されて最初の週末となった16日、各地の観光地は依然として多くの施設が休業し、悪天候もあって人影はまばらだった。都道府県境をまたいだ移動の自粛が呼びかけられている上、感染状況の行方に不安も残っており、観光客でにぎわう日常を取り戻すにはもう少し時間がかかりそうだ。
関東で最も感染者の少ない栃木県では、16日から全業種への休業要請と外出自粛を取りやめた。しかし、日光東照宮を含む世界遺産「日光の社寺」(日光市)は5月末まで拝観休止となっており、付近の日光街道は閑散としていた。
ただ、拝観休止を知らずに訪れる人もちらほら。埼玉県草加市の男性会社員(44)は「緊急事態宣言が解除になったので、開いているかと思ってドライブがてら来た。日光なら大丈夫かと思ったのに」。周辺の土産店や飲食店が加盟する「日光東飲食物産組合」の亀田祐司組合長(67)は「県をまたいだ移動が自粛されているうちは、観光客が戻る見込みはない」と声を落とした。
国内でも屈指の人気温泉地・草津温泉(群馬県草津町)は、「大滝乃湯」「西の河原露天風呂」といった町営入浴施設の休業が続く。宣言解除を受け、施設を管理する町観光課には「入浴できるのか」といった電話が相次いだが、職員は「県境を越えてくる人を今は出迎えるわけにはいかない」と強調した。
全国で唯一、感染者が確認されていない岩手県を代表する観光施設「小岩井農場まきば園」(雫石町)は門を閉じたまま。仙台城跡にある青葉山公園(仙台市青葉区)の人出もまばらで、市内の男性会社員(48)は「例年は仙台青葉まつりの日だが、今年は中止になって残念」。
11日に営業を再開した秋田市の大森山動物園は、開園前から行列ができた。4歳と2歳の息子と訪れた会社員、佐藤彩さん(33)は「子供も楽しんでいるようで良かった」。秋田県は4月14日を最後に、感染者は確認されていないが「気は緩められない。これからもマスクは欠かせない」と話した。
日本三名園の一つ、水戸市の偕楽園は12日から再開しているが、あいにくの雨で訪れる人は少なかった。散歩に来た同市の医師、塙誠さん(82)は、宣言解除について「食べていけなくなるし仕方ない」と理解しつつ、「感染症は気が緩む第2、3波の方が怖い」と、趣味の旅行などは引き続き控えると話した。
例年なら多くの観光客と鹿がたわむれているはずの奈良公園(奈良市)は人影がほとんどなく、鹿が手持ちぶさたな様子で草を食べていた。
東大寺の参道に軒を連ねる土産物店も多くが閉まっている。公園内で飲食店を経営する女性店主は3月中旬から休業しているといい、「いつから店を開けるか人通りを見て考えたいが、今は準備のしようがない。開けるに開けられない状況で、じっと耐えるしかない」とため息をついた。