検察官の定年延長のための検察庁法改正案の今国会成立が見送りとなった。安倍晋三首相と与党幹部が、同法案を含む国家公務員定年延長関連法案の会期内成立を断念したからだ。 【2020年5月19日8時23分追記】初出時のタイトル「今国会提出見送り」を「今国会成立見送り」に訂正いたします。 「ツイッターデモ」に象徴される広範な世論の反発に、政権が耐え切れなかったのが原因だ。安倍首相にとっては「重要法案での初めての挫折」(側近)で、コロナ禍の中での1強崩壊と史上最長首相の求心力低下が浮き彫りになった。 ■「ここはいったん引くしかない」 主要野党が「恣意的な人事を招く」と批判した検察庁法改正案は、週明けに公表された世論調査でいずれも反対が7割近くに達し、内閣支持率も急落した。検察庁法改正案を強行採決すれば、次の世論調査で政権の危険水域とされる支持率3割以下に落ち込むことが確実視され、安倍首相も方針転換を選択せざるをえなかった。 政府与党は改めて今秋に予定される臨時国会での関連法成立を目指すが、世論が批判する黒川弘務検事総長案を断念しない限り、「改正法成立は困難」(自民国対)との見方も広がっている。 今後は、検察首脳人事の練り直しや、幹部ポストの定年延長に関する規定の法案からの削除などが焦点となる。ただ、それ自体が「政府が自らの判断の誤りを認めた」(自民幹部)ことにもなり、政府与党全体への信頼失墜を加速させかねないリスクもはらむ。 政府与党は5月18日午後、安倍首相と二階俊博自民党幹事長らが会談し、検察庁法改正案を含めた国家公務員改正関連法案の今国会成立を見送る方針を決めた。会談では「国民の声に耳を傾ける必要があり、コロナ対策を優先しなければならない」との認識で一致した。首相周辺は「いくら説明しても、もはや国民に理解してもらえない。ここはいったん引くしかないとの判断だった」と語った。 同法案については、自民党内から「説明不足のままの強行採決は、するべきでない」(石破茂元幹事長)などの慎重論が相次ぐ一方、元検事総長を含めた検察OBからの反対意見声明も相次いだ。 安倍首相は「恣意的な人事などまったくありえない」と抗弁したものの、与党内にも「法相も含め、説明不能の状態」(自民幹部)との見方が支配的となった。 多くの国民の反発を招いたのは、政府が1月末に黒川弘務東京高検検事長の定年半年間延長を閣議決定したことだ。検察庁法改正案について、政府は「黒川氏の定年延長とはまったく無関係」と繰り返したが、「過去に例のない定年延長を、後付けで法的に正当化する狙いは明らか」(立憲民主幹部)との批判を消すことができなかった。 ■肩透かしを食う野党
検察官の定年延長のための検察庁法改正案の今国会成立が見送りとなった。安倍晋三首相と与党幹部が、同法案を含む国家公務員定年延長関連法案の会期内成立を断念したからだ。
【2020年5月19日8時23分追記】初出時のタイトル「今国会提出見送り」を「今国会成立見送り」に訂正いたします。
「ツイッターデモ」に象徴される広範な世論の反発に、政権が耐え切れなかったのが原因だ。安倍首相にとっては「重要法案での初めての挫折」(側近)で、コロナ禍の中での1強崩壊と史上最長首相の求心力低下が浮き彫りになった。
■「ここはいったん引くしかない」
主要野党が「恣意的な人事を招く」と批判した検察庁法改正案は、週明けに公表された世論調査でいずれも反対が7割近くに達し、内閣支持率も急落した。検察庁法改正案を強行採決すれば、次の世論調査で政権の危険水域とされる支持率3割以下に落ち込むことが確実視され、安倍首相も方針転換を選択せざるをえなかった。
政府与党は改めて今秋に予定される臨時国会での関連法成立を目指すが、世論が批判する黒川弘務検事総長案を断念しない限り、「改正法成立は困難」(自民国対)との見方も広がっている。
今後は、検察首脳人事の練り直しや、幹部ポストの定年延長に関する規定の法案からの削除などが焦点となる。ただ、それ自体が「政府が自らの判断の誤りを認めた」(自民幹部)ことにもなり、政府与党全体への信頼失墜を加速させかねないリスクもはらむ。
政府与党は5月18日午後、安倍首相と二階俊博自民党幹事長らが会談し、検察庁法改正案を含めた国家公務員改正関連法案の今国会成立を見送る方針を決めた。会談では「国民の声に耳を傾ける必要があり、コロナ対策を優先しなければならない」との認識で一致した。首相周辺は「いくら説明しても、もはや国民に理解してもらえない。ここはいったん引くしかないとの判断だった」と語った。
同法案については、自民党内から「説明不足のままの強行採決は、するべきでない」(石破茂元幹事長)などの慎重論が相次ぐ一方、元検事総長を含めた検察OBからの反対意見声明も相次いだ。
安倍首相は「恣意的な人事などまったくありえない」と抗弁したものの、与党内にも「法相も含め、説明不能の状態」(自民幹部)との見方が支配的となった。
多くの国民の反発を招いたのは、政府が1月末に黒川弘務東京高検検事長の定年半年間延長を閣議決定したことだ。検察庁法改正案について、政府は「黒川氏の定年延長とはまったく無関係」と繰り返したが、「過去に例のない定年延長を、後付けで法的に正当化する狙いは明らか」(立憲民主幹部)との批判を消すことができなかった。
■肩透かしを食う野党